短編集

□美しき終焉
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 夜という暗き闇は哀しみという名にかわり、人の心を染め支配していく。
 ならば、せめてこの月明かりの下で今、確かな光を捧げよう。

 空の青さと、雲の白さを知らない月がマンタイクを照らした。月明かりの下、その光だけが眩しくて闇色に輝いた海を舞台に、虚像の月が水面に揺らめき波紋と共に歪む。そこにはもうひとつの世界が見えた。


「愛してる」


 微かな唇の動きだけで、最期にそれを伝えた。夜と同じその漆黒の君に触れて、ただ静かに水底の館へと姿を無くして沈みんでいく意識。


「さて、と……俺も続いて散りますか」


 自分が何処に在るのかもわからないのに、終焉の鐘の音がこの世界に響いた気がした。

 待っていて、今から私を探すから。待っていて、愛しい人。そして今度は君を探すから。
 時間の果てで、またあなたと逢う約束をしましょう。

 同じ終わりと、新たな始まりを夢見た者たちの、最も深い愛情の形。

 それは――



美しき終焉
(ねえ、ユーリ……殺して?)
(望みのままに、お嬢さん)


温い感じの狂愛を目指してみました。


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