短編集

□「さよなら。」ゲーム
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 ああ、彼はもう決めてしまったんだ。

 礼拝堂へ居並ぶ世界の覇者たち。彼らを前にしても、ルークの心が揺らぐことはなかった。


「決心は変わらぬのか?」
「……はい」


 インゴベルト王の問いに、肯定の意味を持つ言葉を聞きたくなかった。

 やめて、やめてよ。


「生き残る可能性はあるんだろう?」


 ピオニー陛下の言葉に、首を横に振る彼を見たくなかった。

 ねえ、生きて。どうか生きていてよ。


 耳を塞いでしまいたかった。目を背けてしまいたかった。
 誰の声も届かない場所に、誰の目にもとまらない場所に行きたかった。

 逃れたい。消えてしまいたい。こんな現実から、こんなにもリアルな世界から。
 レムの塔へ向かう彼を――死への道を歩み始めてしまった彼を止めることもできずに、ただただ見ているしかできないなんて。
 まだほんの七歳の子供だというのに。なのに、いつの間に君はそんなに物分かりのいい大人になってしまったの。

 死へ恐怖を感じない人なんているはずない。こんなにも重くて大きなものを背負わなければならないなんて。あまりにも残酷すぎる。


 行かないで、

 消えないで、

 死なないで、

 ねえ、願うことさえも許されない世界なのかな。


 世界の未来か、己の明日か。
 私には計り知れないその二つの重さに天秤は、今傾いてしまった。

 「さようなら。」選ぶしかない。そんな残酷なゲームなんて、いらないのに。



「さよなら。」ゲーム
(リセットはできなかった)
(君が消えて、世界が救われてもゲームオーバー)


拝礼堂云々とレムの塔は、涙で画面が見えません。


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