短編集

□薄紅色の恋心 微笑むかのように風と共に舞うは 花ひとひら
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 声に出して言える内容ではないのだが、朝は決して得意な方ではない。
 だがそれは、ある日突然のこと。やかましく時間を知らせるそれが、鳴り響く前に目を覚ました。

 カーテンを開け放つと、空には青い絵の具を零したような憎らしい程に広がる青空と、さんさんと輝きを放つ眩しい太陽。今日は快晴だ。

 僕が目覚めたのは、窓辺から差し込む朝日の眩しさでもなければ、カーテンを静かに揺らすそよ風でもない。窓辺から顔を覗かせる小鳥の囀りでもなければ、眠りを妨げる音でも声でもなかった。かと言って悪夢に魘れた訳でもない。
 理由があるとすれば、それはきっと、この胸の内にある感情の所為だろう。らしくもない。こんなくだらない感情に酷く頭を抱えるなんて。時折、この胸を締め付けては悩ませている。
 哀しいくらいに、君は年上の女性だった。

 どんなに見つめてもまだ届かないんだ。背の高さと、その心まで僕という人間は。優しく柔らかく、そして眩しい程に輝くその笑顔は、見上げるだけの太陽のようで、さながら高嶺の花だ。
 だからこそ望んだ。君と対等でありたいと。
 君と対等になれたのなら、この思いを打ち明けたいんだ。

 いつまでも、自分に足りないものばかりが目に映る。だけど、弱気に負けていたら僕の欲しいものは掴めないだろう。

 近くにいるだけで、こんなにも心臓がうるさい。だけど、裏腹に態度は素っ気なくなるばかりだ。それでも、君は本当の僕を見ていてくれると、僕はどこか無意識に甘えていたんだろう。

 僕を僕として見て貰えるように、認めて貰えるように、誓いを立てて生きていく。

 全ては、君と対等になる為に。



    




 
   
     


(待っていてくれ)
(必ずこの僕が、君を振り向かせるその時まで)


桃色マントの少年の、桃色の片思い。


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