最低で最悪で最愛
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「どーしたんスか?」
1年の晃人のクラスの前に立って晃人を呼んだ小野匡也がそこには居た。匡也は周りの1年の女子の視線を彼方此方から浴びてるにもかかわらず、平然とそこに立っていた。
匡也は持っていた紙袋を晃人に差し出して笑いかけた。
「これ制服、遅くなってゴメンね。」
晃人は紙袋を受け取ると、追試で返ってきた答案の事を思い出した。
「あ、追試無事に終わりました。匡也さんのお陰で今までにない点取っちゃったッス!」
嬉しくてパァアと周りが明るくなるんでないかと思うくらい晃人は笑うと、匡也はクスッと目尻を緩めて微笑む。
「そう、それは良かった」
「あ、連日お世話になったんで何かお礼したいんスけど、今日放課後とかどーですか?」
匡也は驚くと苦笑した。
「いや、お礼なんていいから。それに制服汚したお詫びだしね」
「気持ちなんで気にしいでいいッスよ!オレがそうしたいだけなんで」
晃人がそうやっておしきるのに苦笑して匡也は頷いた。
「そこまで言うなら…また放課後」
晃人は喜んで自分のクラス帰っていく匡也に手を大きく振っていた。
そんな始終を遠目で久信と尊は見届けてて尊はため息をついた。
「凄いなついてるなぁ…晃人のヤツ」
「…オレは知らないからな…」
そして放課後、晃人はお礼をする為に匡也と一緒に学校を出て、簡単にすませれそうな飲食を奢ろうとファミレスへと晃人と匡也は入っていった。
ヤッパリ匡也は周りの目を引き付けてしまっていて、他の席に座ってる女子達がチラチラと此方を気にしている。
匡也はよくあるファミレスのメニューを見ながら決まったのか近くの店員さんに声をかけた。
「すいませーん」
店員さんは呼ばれて直ぐに何だか嬉しそうにしながら注文を受付にやってきた。
「「お子さまランチ1つ」」
一瞬場が固まった。
晃人は聞いた…いや、聞こえた言葉を疑った。仮にも高2の男子で女子の目を惹き付けてしまうようなイケメンが、聞き間違いでなければ『お子さまランチ』と言ったように聞こえたのは色んな意味でおかしすぎた。
店員も驚いたのか営業スマイルが崩れそうになっている。
「え…えっと『お子さまランチ』1つですね…」
必死に笑顔を崩さないようにしてる店員に匡也は「うん」と笑顔で返した。
その笑顔に今度は店員は頬をほんのり紅く染める。
「晃人くんは…?」
匡也に聞かれてそこでやっと晃人は呆然としてた頭をハッと我に帰った。晃人は慌ててメニューを見たがメニューの文字も美味しそうな料理の写真も頭に入ってこず、飲み物1つ注文して終わってしまった。
「め、メロンソーダで」
店員が注文を受け取ってキッチンの方へ向かっていくと晃人は何故か肩に入ってた力を一気に脱力した。
「ここのお子さまランチって意外に美味しいらしく食べて見たかったんだよ」
ニコニコしてそう言う匡也に晃人は必死に笑顔を浮かべて
「そうなんですか〜」
っと在り来たりな返事をするので精一杯だった。
何だかちょっと寿命が縮んでしまったんじゃないかと思うくらいの衝撃を晃人は感じていたが、それでも『お子さまランチ』が本当に来るのかが疑わしぃ…。そうどこかで願いながらもそれは容易く打ち砕かれ、テーブルの上には本当に『お子さまランチ』が来てしまった。
「ほ…本当に『お子さまランチ』ッスね…」
それは本当に『お子さまランチ』らしい「お子さまランチ」だった。丸い形に固めたゴハンの上には旗が立っていて、ハンバーグにタコさんウィンナー、デザートにはプリン。
「そうだね。」
匡也はその時だけいつものニコリとせずに不適に妖しくうっすらと微笑んだ。
それに晃人はゾクッと一瞬だけ悪寒を感じたが、匡也の顔が直ぐにニコリと微笑んで気のせいだったのかと少し首を傾げる。
(しかし、さっきから視線が…)
何だか周りの視線がさっきより増した気がして、何となく周りに視線を移してみると、視界に入る近くの女子がこちらを注視していた。
「ねぇねぇ見て、あれ『お子さまランチ』じゃない?」
「えー?あ、本当だー。何アレかわい〜い〜」
そんな女子の言葉が耳に入って、晃人は急にまるで中から吹き上げるように恥ずかしくなった。視線が合う前に匡也に戻すと、目の前にお子さまランチの具が乗ったスプーンの先があった。
「はい、あ〜〜ん」
「…へぇ!?」
思わず気の抜けた声が出た。
「味見してみなよ。はい、あーんして」
え…?
今この大注目を浴びてる中で『お子さまランチ』をあーんして食べるという事を迫られている。
<ちょ…ちょっと待てええぇ〜〜…!!!>
。