最低で最悪で最愛

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結局、大注目の中「お子さまランチをあーんして食べる」を晃人はやってしまったのである。
今までにない羞恥に襲われた。けど、有無もなしに匡也のイケメンスマイルが何故かその時だけはいつも以上に楽しそうに笑みを浮かべて、断れない上に男の晃人から見ても何だかドキッとしたので従ってしまったのだった。
羞恥とその笑顔にファミレスから出てから未だに心臓がドキドキと速く脈打っていた。

(なんだろ…この辱しめられたような気持ち…!)

大きな交差点につき、そこで一度立ち止まると匡也を見上げた。丁度視線が合う。

「それじゃあ俺はこっちだから、今日はありがとう。」

凄く機嫌がいいらしく笑みに一層磨きがかかっていた。晃人はまだドキドキいってる余韻にそわそわして頷いた。

「じゃあ、またね」

匡也は手を振って去っていった。
あんな堂々とあんなもの注文できる匡也は『天然』なんだろうか…とそんな事を思いながら晃人も自分の家へと帰路を歩いていった。



翌日、
なんだか昨日のファミレスの出来事が忘れられないまま登校していた。

「いてっ…!」

不注意で前を歩いてた人の肩に肩がぶつかった。

「ゴメン…」

謝罪の言葉をする前に肩にぶつかった人の顔を見て一瞬固まる。
どこかの漫画に出てきそうなよくある不良じみた集団の一人にブカってしまったのだ。ぶつかられた相手は機嫌が悪そうに睨み付けてくる。

「あ゛あ!?なんだオマエ?」

晃人はビクッとして嫌な予感が頭を過る。

「ご…ゴメンナサイ…!!」

「なんだァその態度は?」

どうやら予感は的中し、相手は相当機嫌が悪いらしい。今にも掴みかかって来そうな勢いに晃人は直感的に頭を下げてからもうダッシュで下足へと走った。

「ゴメンナサイ!スイマセ〜ン!!」

「あ、待てコラァ!!」


不良が追ってくるのを見て晃人は真っ青になった。
なんでぶつかったんだろうなんて今更どーしようもない過去の不幸を呪いながら全力で逃げる。

「待てつってんだろうが…!!」

「ヒィィイイイ!!!」

ちょっと泣きたい気持ちになりながら校舎の廊下の角を曲がる。
すると、曲がった瞬間何かに横から引っ張られて、階段の横にできたちょっとした隠れ場所に連れ込まれた。

「なっ…」

「シッ…!」

人差し指を口元に立てて静かにするように仰いだのは、匡也だった。
それに従い静かにして相手が過ぎ去っていくのを待った。

「アイツどこ行った?」

「まだ近くにいるだろ?」

そう声がして足音が遠退いていくのが分かってから晃人は脱力した。

「た…助かった…」

「朝から追われてるからビックリしたよ。大丈夫?」

匡也は苦笑する。

「あ…はい、助かりました。」
晃人はホッと息をついてうつ向いた。

「ありがとうござ…い…」

視線を上げてお礼の言葉を口に出した時、匡也の顔が酷く不適に薄ら笑いを浮かべていていた。晃人はそれに目を奪われると瞬間手で押し出される。

「え…?」

階段の隠れてた場所から廊下に押し出されて、晃人は呆然と呆気に取られて匡也の表情を眺めていた。何が起きたか直ぐに理解出来ずに立ち尽くしていると、廊下の奥の方からさっきの不良の達の声が聞こえた。

「あ、いたぞ!」

「待てコラァ!!」

走ってくるのにハッとして、晃人はまだ頭でさっきの事を理解出来ずに走り逃げた。
なんなんだ!なんなんだ〜〜!そう心の中で叫びながら、近くに先生がいるの発見して、先生に叫んだ。


「た…助けて先生〜!!」


流石に先生がいる前では諦めたのか、それで一件落着した。
晃人はドって疲れるとさっきの匡也の行動が気になって戻ってみると、まだそこには匡也はいた。
さっきの少し寒気がする笑は消えいつも穏やかめいた笑みを浮かべている。
晃人は心のどこかでホッとして近づいた。

「大丈夫だったかい?」

「あ、はい。なんとか…」

晃人は苦笑を浮かべ続ける。

「…ていうか、さっきはなんで…」

押し出された疑問を口にしたら、匡也の笑みが一瞬固まった。
何かいけない事を言ってしまった気がすると、匡也は晃人の腕を掴んで壁に押し付けると匡也と板挟みになった。
戸惑って匡也を見上げると、二重人格の切り替わる瞬間見たように、普段の匡也の表情とは別物の表情が顔に浮かんでいた。目を細めた、どこかゾクッと悪寒をさせられる笑み。匡也の指が晃人の顎に触れる

「その戸惑った顔…凄くそそる」

舌舐めずるような視線に晃人はゾクッと怯え、そしてそれでようやく気づいて分かった。

この人は…

<『ワザと』そうした>

と言うことに…


(な…なんだとぉおおお!!!!)


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