最低で最悪で最愛

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晃人はかぁあああと顔を真っ赤にして、掴まれた顎を手で払い突き飛ばした。
ガンッとドアの壁に軽くぶつかる。

「痛いなぁ…危ないだろ?」

匡也は自分の前髪をかきあげた。
イケメンがやると絵になるが、今は別の意味で似合いそうだ。自然な物のというよりは、ナルシストがやるような感じに見える。
晃人は唇を手で拭い匡也を睨んだ。

「お前が変な事するからだろ!?この…二重人格ヤロ!!!」

「…君がついてくるなって言うから代わりにこっちにしたのに?」

腰に手を置き呆れたような口ぶりで匡也は首を傾げる。
完全に上から目線。自分に間違いなどないと思ってるからこその台詞と格好。
呆れたいのは晃人の方だった。

「普通はこんな事しねーだろ!!…男同士で!」

「そうだね…普通はしない。『からかう時』、くらいしかね。」


ニコッとわざとらしく匡也は笑う。
その言葉でカチンと晃人は頭にきた。
完全に頭に血が上ってイライライライラして他になにも考えられなくなり、手の拳を握り締める。

「へ〜…それだけの為に…?」

「うん」

キラキラの笑顔で匡也は答えた。…瞬間

バシッ!!

匡也の顔面の横を拳が通り後ろのドアの壁が券の形に凹んだ。
「…晃人くん?」

流石の匡也も表情が固まっていた。だが、晃人にはそんな事は関係がない。


『一回そのキレーな顔…殴ってみたかったんだよなぁ』


いつも逆転で晃人の方がまんえんの笑みを浮かべ(目は笑ってない)券の関節をポキポキと音をならしている。
反対に匡也は微笑みながら何処か焦る顔色を浮かべていた。

「やだな〜暴力は反対…だ!」

言い切るのと同時に匡也はトイレから飛び出た。

「あ!待てこら…!!いつもいつも思い道理になると思うなよ!!この変態ドSヤロウ…!!!」

その後を全力で追って行った。
体格差の力以外では負ける気がしなかったのだが、その後暫く匡也と追いかけっこになってしまった。

この時、まさに『からかわれてる』ということに晃人は気がつかなかった。





翌日、よくよく考えたら…

《冗談であんなキスできるか?》

昨日起こった事が全くもって理解できないでいた。
完全に頭に血が上ってたので、ついガムシャラに追いかけてたが、結局何かはぶらかされた気がした。

つかあんなディープなキスを男としたのが一番問題だ…!!
『からかう』ってそんな簡単にできるくらいアイツ遊んでたのかよ…


「って何でオレがそんな事を気にしないといけないんだぁああ!」


晃人は頭を無茶苦茶にかいた。急に叫んだので側にいた二人がビクッとして驚く。

「ど…どしたんだよ急に…」

尊が晃人に視線を送った。
晃人は机にバタッと倒れ寝そべ

「オレ…振り回されてるよな…」

ため息をつきながら項垂れた。
誰の事か言ってないが尊と久信はそれだけで、「ああ、あの人か」と直ぐに分かるくらいには認識が二人にもある。

「最初っからな…」

哀れみの視線を尊から感じ、更に「うう…」と声をもらした。ポンポンと頭を久信が撫でてくれた。

「うう…ありがとヒサ〜」

コクコクと久信は頷いた。

「あーでも、あの人の聞いた噂から言うとかなりマシな気がするな」

尊が少し意外そうな顔をしていた。
晃人は首を傾げる

「噂…?」

「まぁ色々あるんだけど、中でも中学時代が一番酷いとか何とか…」

「あー…まぁ反抗期だかんなぁ」

中学時代といえば、反抗期ゆえに色々無駄にやってしまう事がある。それは晃人自身もあったが故にわかる事だ。
実際にオレも色々と…


「女を泣かした数は半端ないとかも聞いたな」


「……………………だろな」

「…何その間(笑)」

尊が苦笑する。
晃人はぐしゃぐしゃと頭をかいた。

《ヤッパリ…》

あの顔で遊んでないとかないだろとは思っていたが、泣かした数は半端ないって…

「ああ、でも何となく分かるかも…。表面と内面がギャップあるし(つか中味最悪だし)、故意に苛めるから…女子だと泣かされて嫌になるかもな…。」


「「…………」」

二人が沈黙するので顔を上げて視線を移すと凄く哀れみの顔で視線を向けられていた。

「な…なんだよ?」

「いや…」

二人からポンと肩に手を置かれた。
晃人は二人の言いたい事が分からず首を傾げる。


「なーに?俺の話?」

匡也が廊下からひょこっと顔を出して教室に入ってきた。
晃人はぎょっとして体を起こすと久信の後ろに隠れた。
そんな様子に匡也はクスッと笑う

「あれ?今日は逃げるの?昨日はあんなに熱烈に追いかけてくれたのに…?」

その言い方にバッと顔を出して叫ぶ

「オレがストーカーしたみたいにいうな…!!」

そんな晃人の反応を見てクスクスと匡也は笑った。
晃人は眉をしかめた。
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