最低で最悪で最愛
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付き合ってってこの男は何を言ってるんだ。
こんなざわざわしたクラスの中でケロリと言えてしまうような言葉じゃない。
変にざわついてないから、周りには聞こえてないんだろうけど。
「…ど…どこに?」
額に汗が滲んできた。
もしかしたら、勘違いかもしれない。
付き合うって別にそう意味だけじゃないし。
笑みがひきつって聞き返す。
「…そうじゃないけど、まぁいいや。…今日放課後空いてる?」
矢上にニコッと笑みを返された。
そーじゃないってどーいー事だよ!?と気になるホッとできない答え方に、オレは混乱してくる。
「…あ、ああ。別に特に用事はないけど?」
「じゃあ放課後、俺にちょっと付き合ってくんない?」
「…別にいいぜ」
矢上は「やった」と言わんばかりに嬉しそうな顔を浮かべては、キラッキラッな笑顔を向けられた。
「じゃあ、放課後な」
「お…おう」
なんなんだ…
本当になんなんだ…?
矢上は立ち上がって軽くこっちに手を振ってから、自分のクラスへと戻って行った。
それから、尊と久信が近くに来た。
「アイツって隣のクラスの矢上だよな?」
尊がクイッと眼鏡を押さえてから、珍
しそうに言った。
まぁ関わり持ってなかったんだから、当たり前な反応だ。隣のクラスだけど、こっちには来た所あんま見たことないし。
「そう、何か知らねーけど、放課後付き合ってってさ…なんだろう…?」
だらけて机に突っ伏してると、久信が何か言いたげな顔をしている。
「…何だよ?」
「………いや」
「?」
放課後、教室を出ると廊下で矢上が待っていた。
通りがかりに女子に声をかけられていたのか、こっちに気付くと女子に手を振ってこっちに来た。
匡也ばり囲まれてるような事はないみたいだけど、流石イケメンと言うとこか。
「じゃあ、行こうか」
ニッと笑った。
イケメンは笑顔も爽やかだ。
「ああ、…って言うかどこ行くんだ?」
学校を出る方向へと歩き出す。
矢上は、うーんと軽く考えては目線をオレに移した。
「その辺ぶらぶらするだけとかじゃダメ?」
「???…ダメじゃねーけど、どっか付き合いに行くんじゃねーの?」
オレは首を傾げると、ニッと矢上は笑みを浮かべた。
「どこつーか…俺は加賀と話したいだけだし」
「話…?」
オレはまた首を傾げると、「そう」と矢上は頷いた。
わざ
わざ帰りに誘ってまでする話ってなんだろうと疑問があるけど、あんまり身構えても仕方ない。
学校を出ると、言う通り近くをその辺りをブラブラした。
学校の近所何て意外と何もなかったりするけど、学生目当ての安い店とかはあったりする。この学校の近所でも、たこ焼きが安くて、お小遣いが少ない学生には100円で買えてしまうのは有難い訳で…
「アツッ…!」
食い盛りの男子は、小腹が減ってぶらぶらする時には良く買う。
出来立てで舌が軽く火傷した。
「あ、俺のタコ2コ入ってる」
「いきなり当たりとかラッキーじゃん」
歩きながら食って、とりとめない話をした。矢上は噂ほど軽いような感じのイメージじゃなかった。
その辺りを歩いた後、最終的に近場の公園のベンチにおち着いた。
オレは、久々にのびのびして背筋を伸ばした。
「あ〜。何か久々にゆっくりした気がすんなぁ」
「…そんな気休まる事なかったんだ?」
「最近、色々あったからな…」
写真の件を思い出すと嫌でも原因の匡也が頭をかすめる。
それでイラッとして、『あの野郎〜』と毎度なる。
「…例の写真の件?」
「そうそう、散々だった。」
女子には睨まれるし、
変に注目浴びるし…散々だった。
「俺もこの前までは付き合ってると思ってたしな…」
オレは、加賀の言葉に心底嫌そうな顔を浮かべる。
それに矢上は苦笑した。
つまり、大体の奴はこう思ってる訳だ。あの心底最低な奴とデキてるとか…マジ勘弁してほしい。
「でも良かった。付き合ってなくて。」
矢上は笑みを溢した
「…え?」
何度か目を瞬く。
「俺、加賀の事すっげー好きだから」
無邪気な笑みを浮かべる矢上に、一瞬だけ周りの音が止んだ。
オレはその言葉に固まる。
「…へ?」
その言葉の意味を直ぐに認識出来なかった。
「なぁ、一番最初に話した時の事覚えてっかな…?」
「…一番最初の時?」
矢上に訊かれて、オレは記憶を探りながら首を傾げる。
記憶がぼんやりと出てきて思い出した。
「…あー!あん時だよな。」