最低で最悪で最愛

□5
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5、…最悪?


うまく匡也に捕まらないように逃げ続け、気づいたら夏休みに入っていた。
テストは尊や久信のお陰でギリギリ追試をまのがれ…


無事に夏休みを迎えた!!


頭にはまだ匡也の事が気にかかっていたが、休みに匡也には滅多に会う事もないし、休みを明けたら頃にはこの変なモヤモヤした状態も収まっているだろう。
そう思い込み、夏休みを早速謳歌する事にした。


そんで、夏休みと言えば…



『おーすげぇ!マジ海だァアアア!!』



目の前には青い海!青い空!
入道雲が遠くに見え、太陽はギラギラと輝いて砂浜は人で賑わっていた。

「当たり前だろ…海にきたんだから」

尊が晃人の騒ぎぐあいに呆れてため息をもらした。

「こういう時しか来ないけどな」

「まぁ…そうなんだけどはしゃぎ過ぎだって」

隣で久信が砂浜に走っていく晃人を目で追って言うのを見て、尊は苦笑した。
そして、二人は走っていった晃人を追っていく。


「海なんていつ以来だろ…」


この数年まともな旅行もしてなかったからか、余計に気持ちが高まっていた。
オレは海風を受けて深呼吸する。

塩の香りがした。


「おーい、そろそろ行くぞ!遊ぶのは
荷物一式置いてからにしようぜ!」

そう尊が呼び掛けて、オレは「うん!」と頷いて二人へ駆けていった。
追い付いてから、久信にオレはお礼を言った。

「ありがとな!まさか海の店で住み込みで働けるとは思わなかったぜ〜!」

「いやいい、…それにお礼は着いてから叔父さんに言ってくれ」

久信は首を横に軽く振った。
実は、夏休みにバイトを探していたんだけど。そこに丁度、海で店をやっている久信の叔父さんが短期の住み込みバイト募集してるって事で、お言葉に甘えて仕事しながら軽く旅行気分を味わう事にした。

その場所につくと、『海の家』とハッキリ言える拘りがある全体的に白いデザインをした店だった。
外には客席用に日陰用のパラソルと机と椅子が何席分か並んでいる。店の玄関中に入るとまた、拘りがある内装をしていた。
カウンターにいたのか、直ぐにハスキーな低い声が耳に響いた。

「よぉ、来たか!久信久しぶりだなぁ!また身長伸びたんじゃないのか?」

カウンターから出てきた人は、肌が黒く健康そうな程よい筋肉がついた体つきで、叔父さんと言うにはまだ少し早そうな30歳前後くらいに見えた。

「リュウさん、お久しぶりです」

ポンポンと久信
の体を叩いて、それからオレと尊に視線を移した。オレと尊は軽く会釈する

「加賀晃人です!雇って貰ってありがとうございます!どうぞヨロシクお願いします!」

「浜坂尊です。暫くお世話になります。」

そう挨拶すると、久信の叔父さんリュウさんはニカッと笑ってオレと尊の肩に手を置いた。

「君らが久信の友達か!遠慮しなくていいからな。こちらこそ店の手伝いヨロシク頼むよ」

「「はい」」

オレと尊は頷いた。
そこで、リュウさんは久信に振り返る

「ああ、そう言えばもう一人の子は先に来て奥にいるぞ。とりあえず、荷物を置いてくるといい」

それを聞いて久信と尊がビクッと体を震わして反応した。
リュウさんは、それだけ言うと一度カウンターに戻って行った。オレは「もう一人」と言われて首を傾げ二人を見た。

「誰か知り合いでも誘ったのか?」

「…う…うん。その…知り合いと言えばそうだな…」

二人はおもむろに視線を外すと濁した返事をする。
オレは二人の様子が訳が分からずに首を傾げてると、カウンター横の住まいの方の入り口から人影が見えた。


「着いたんだね。後から来ようと思ったら俺の方が先についてしまったみたいだ。」



き覚えのある声にオレは視線を送ると、その人物に驚いて目を見開いた。
いるハズがないその顔に、オレは幻でも見てるのかと一度目を擦って見直した。


「やあ、久しぶり。晃人くん」

そこには、いつもより爽やかに微笑む『匡也』がいた。
オレは暫く呆然として


「な…なんでいんだよアンタが!!!」


そう叫んで勢いよく匡也に指を差した。

いるはずがない!!

アレから避けて会話をまるっきりしてないし、夏休みに海に行くなんて話しをその前に話した覚えもない。
そんな予定さえ知らないはずなのに、知ってるということは…。

「二人に聞いたらここに行くって聞いて来ちゃった」

ニコニコと匡也が笑った。
「なっ!」とオレは驚くと二人に勢いよく顔を向けてる。二人は、下を向いて顔色を悪くしていた。


「…すまん。」

「あれは…言うしかなかった…。」


いつもじゃ見ない顔を見て、匡也に視線を向けるとキラキラとした笑顔をしていた。


い…いったい…何を言われたんだ…?


ロクな事ではないとだけは察した。
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