特別生活集

□半歩先
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はらり





どこから来たのか、梅の花びらが目の前を舞う。

その花びらを運んできたそよ風からは、ほんのりと春の香り。

ほわほわと柔らかくて軽い、暖かな空気。

数週間前にいくつもの防寒具を身に着けて凍えてきたことなど忘れてしまいそうだ。




『ツーナたろっ!!!!』

「うわっ!?」



突然の大声と衝撃に思わず声を上げる。

振り返らなくてもわかる。

この声はー・・・



「向日葵、先輩・・・。」


痛みが広がる背中をさすりながら、後ろにいる人物をにらみつける。

当の本人はといえば、謝罪の様子もなく口笛を吹いている。



『よ、元気にしてるか?』

「先輩が殴ったから元気じゃありません・・・っ」

『大丈夫だって。男ならコレぐらい耐えろよ、ツナ太郎。』

「ツナ太郎って何ですか!!」

『え、いや、あれでしょ。君、ツナ缶から生まれたツナ太郎でしょ?』

「いや違いますから」

『そんな全力で拒否しなくてもいいじゃんかー。』




せっかく私は通行人Cの役やろうとおもってたのにー、
とかわけのわからないことを呟きながら、俺と並んで歩き出す。
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