復活・日常生活集

□ほんとは好きでしたなんて、そんな今更
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知らないくせに。


わたしの気持ちなんて、これっぽっちも知らないくせに。




      『ほんとは好きでしたなんて、そんな今更』




1週間前、ツナから報告を受けた。




「悠希!よかった、まだいた。」


息を切らしながら、私の元へツナが走ってくる。

しかも、今までに見たことがないくらいの満面の笑みで。


「・・・・ツナ、どうしたの?そんなに慌てて。」


そしてツナは、無邪気にこう言った。




「俺、京子ちゃんと付き合うことになった!」





・・・・・・・・「え?」


さっき、ダメもとで告白したら「いいよ」って言ってくれたんだ!

キラキラと眩しい笑顔でキミは言った。


「ありがとな!悠希。お前が応援してくれなかったら、オレ、告白なんてできなかった。」

「・・・・・・・・良かった、ね。仲良くし、なよ・・・・・・。」


無意識に声が震える。

ダメだ。泣く。

けど、こんな幸せそうなツナの前で、泣けない。
心配かけちゃ、いけない。


「・・・・・・・・っ・・・・・・・。」


「・・・・どうしたんだ?悠希。」



どーしたもこーしたもねぇよ!!
おめーのせいで泣きそうになってんだろうが!!

せいいっぱいの虚勢をはるものの、声にならない。


私は、今できるありったけの笑顔でこう言った。


「とっ、とりあえず、幸せになってね!!私、用事思い出したから!!」


「あっ・・・・、悠希っっ!!!!」


今までに無いくらいのスピードで、逃げるように走る。

・・・・・・いや、実際逃げているのだが。




逃げないと、心が壊れそうだった。

まるで、鈍器で思い切り頭を殴られたようだった。


ツナの顔を見たら、涙が溢れ出そうだった。




そして、家に帰ってベッドへダイブ。



――――――――ゆっくりと、枕が濡れていった。





そして早くも1週間。


あれから、「風邪だ」といって学校を休んでいる。


仲の良さそうな2人を直視したくない。

ツナを見たら、泣いてしまう。


そう思っている。


みんなに心配かけてる、って分かってる。

だけど、今までがんばってきたんだから、これくらい許してよ。


ちょっとだけ、自分にワガママになってみたり。





そして久しぶりに、静かに読書でもしようか、と棚から本を取り出したとき。



ピンポーン


『・・・あ、沢田です。悠希、いますか?』


まぎれもない、これはツナの声。


「あら、ツナ君!お久しぶりねぇ♪悠希ー!ツナ君よー?」


行くべきか、行くまいか。

どうしたらいいのだろうか。

・・・・・・・・とりあえず、無視してよう。


「悠希ーー?ツナ君が来てるわよー?寝てるのー?」

『あ・・・、寝てるんだったら起こさなくても大丈夫ですよ。プリント届けに来ただけなので。』

「う〜ん・・・・・、寝てなきゃいけないほど、体調が悪いわけじゃないと思うんだけど。」

『え?』


あんの、バカ親!!
なんのために無視してると思ってるんだ!!

風邪で学校休んでんだよ!!
そういうことになってるんだよ!!


ちょっと小声で叫んでみる。


・・・・・・まあいいか、インターホン越しなら顔見なくて済むし。

さっさとプリント貰って、帰らせよう。



とんとんとん・・・・・・。

階段を静かに下りる。



「あら、起きてるじゃない。なんですぐ来ないのよ!」

「母さんの大声なら、熟睡中でも目ぇ覚めるっつーの!!」


母親に悪態をつきながら、インターホンへ向かう。




「・・・・・・・はい、悠希です。」

『あ、オレだよ。綱吉。』

「声聞けばわかるし。てか母さんが言ってたし。」


何故だろうか。早く用件をすませようなんて考えていたのに。

もっと話していたい、と想ってしまうのは。


『プリント・・・・・・・、溜まってるから、届けに来たんだ。』

「うん。」

『京子ちゃんとかも、みんな心配してるし。』

「うん。」


・・・・・・京子ちゃん、だけですか。


『体の調子が良くなったら、また学校に来いよ?勉強、遅れるぞ?』

「あんたほどバカじゃありません。」

『・・・・・・・・いつもと同じだな。それなら学校に来れるんじゃないか?』


いけない理由があるんです。


しかも、あなたが原因だし。


『・・・・・・・・・・・・、もしなんかあったら。』


なんかあったら、何?


『辛いときは俺に言えよな。力になりたいし。』





あなたには言えません。


涙が溢れた。




今までのどんな言葉より、今の言葉が一番心に突き刺さった。






    ―――――――ほんとは好きでしたなんて、そんな今更―――――――



あなたに言われたその一言が、一番辛い。

今更、『好き』なんて、もう遅すぎたんだ。









あとがきという名の言い逃れ→
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