復活・日常生活集

□ほんとは好きでしたなんて、そんな今更2
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放課後。

京子ちゃんと一緒に帰ろうと思っていたのに、クラスの奴に日直を押し付けられた。


でも、今となっては「良かったかもしれない」と思っている俺はゲンキンだ。



「・・・・・・悠希・・・・・・。」

「近づかないで、私に。」


分からない。


拒絶されている理由が分からない。




         ほんとは好きでしたなんて、そんな今更2



京子ちゃんと付き合い始めてから、早くも10日。
そんなに進展があったわけじゃないけれど、俺にとっては天国のような時間だ。


でも、それと同時に気がかりもある。

悠希だ。

最近ほとんど学校に来ていない。
本人は『風邪だ』と言っていたけど、多分違う。


―――3日前、プリントを届けるついでにお見舞いに行って来た。
そのときの1は、いたって元気そうだった。

・・・・・・・ただ、今にも泣きそうな表情でこちらを見つめていたのだ。


それが、気がかりで―――。


「・・・・・・十代目?あれって、橘じゃないっスか?」

「え!?」


獄寺くんに言われるまで、全く気づかなかった。

そうだ。外を歩いているのは、悠希だ。


やっと来てくれたんだ・・・・・・!



悠希が、教室に入ってくる。


「っ悠希・・・・・「橘っ!大丈夫か!?」・・・・・・。」


みんながわらわらと悠希のもとへ駆け寄る。
「悠希、大丈夫!?」「悠希〜〜っっ!!良かったよぉぉ〜〜!」

そんな声が、あちこちから聞こえてくる。

・・・・・・・っていかんいかん。俺も行かないと。


「・・・・・・ツナ。」

「悠希!良かった、体調良くなったんだな!心配したよ。」

「・・・・・・あぁ、ごめんね。心配かけて。」


・・・・・・・・あれ?なんか違和感が・・・・・。

俺の眼を、見ていない。
眼に光が、輝きがない。

おかしい。

他の人たちに対しての態度は、前と変わらないのに、『俺』に対しての態度はなんか違う。




―――――その後も話しかけたが、ほとんど会話にならず。
いや、無視されたと言った方が正しいか。

無視と言っても、みんなに話しかけられていたから俺の声が聞こえなかっただけかもしれない。
でも、一度も俺の方を向かなかったって言うのはおかしくないか?






―――――そんなこんなで冒頭に戻る。


真面目に日直の仕事をしていた、そんなとき。
悠希が教室へ入って来たのだ。一人で。

話しかけるチャンスだ、と思って話しかけたけど拒絶。


何故?


「・・・・・・なんで、無視したんだ?なんで、眼を合わせてくれないんだ?」

「・・・・っ・・・・・・。」


こうなったら、全部言ってやる。
溜めていたものを、吐き出してやろうじゃないか。


「『何かあったら俺に言えよ』って言っただろ?俺は、そんなに頼りないのか?」


こうなったからには、もう止まることを知らない暴走列車だ。


「そんなに、俺がキライなのか・・・・・・?」

「違う!!」


驚いた。こんなに大きな声で、叫ぶなんて。


「ツナのこと、キライなわけないでしょ?私が。」

「じゃ、じゃあ何で俺のこと無視するんだよ。」

「・・・・・ほら、ツナと京子付き合ってるじゃんか。だから、京子に誤解させないように。」

「そんなことのために、無視なんてするなよ!」


ついつい、声に力が入ってしまう。
それに、そんな理由からではないはずだ。


「本当のこと、言ってくれよ。俺は、何言われてもお前をキライになったりしないから。」

「・・・・・っ、ウソツキ。」

「おっ、俺はウソなんて・・・・・えっ・・・・・・・?」


ポタッ、ポタポタッ。

教室の床に、涙が零れ落ちる。


「ご、ごめん!!泣かせるつもりなんて・・・・・「大嫌い。」えっ?!」


わからない。さっきは「キライじゃない」今度は「大嫌い」。




―――――俺には、悠希に拒絶される理由も、悠希が泣いている理由もわからなかった。



  ―――――  お前が泣いてるのなんでだか分かんなくて不安になる  ―――――

そう思うのは、『特別な感情を抱いているから』とようやく気がついた。









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