黒猫

□黒猫
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今鈴は一軒のボロアパートの前に立っている



二階建ての木造アパート




そして登る度にギシギシと鳴る階段を上がって一番手前の部屋に入る




此処は夜の私の




黒猫の隠れ家だ――




部屋には必要な物以外一切ない





と言ってもほとんど何も置いてないが




家賃は払っているので水は出る




ここでシャワーを浴びて着替えてからおじぃ達の家に向かう





ふと綺麗に畳まれた着物に視線を落とす




“女の子らしい色を着なさい――”




誰かが言っていた





女の子らしい言葉遣いをしなさい


女の子らしい遊びをしなさい



女の子らしく


鈴は女の子なんだから――





あぁそうだ…




これは母親の言葉だ




頭に響く声に耳を塞いだ






『――こんな色嫌い…』






そう呟いて桃色の着物に袖を通した





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