黒猫
□黒猫
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『悔しくてさ。おじぃとおばぁが悲しむから泣けなくて…だけど一人じゃもっと惨めで泣けなかった』
明るい声だが鈴の手は着物を握り締めていた
「なら、今吐き出しちまえよ。銀さんが全部受け止めてやっから」
その言葉に胸が熱くなる
新八が神楽と定春を連れて出て行くのを気配で感じて
そんな事しなくていい
そう言いたかったのに言葉が詰まって出て来ない
『…ふ……うっ…』
泣き方なんて忘れた筈なのに…目に溜まる涙
「お前は頑張ってるよ」
上から聞こえた声と頭を撫でる大きな手
『ガキ扱い…しないでッ…』
「はいはい」
一度溢れた涙は止まらなくて…
気付けば声を上げて泣いていた
玄関を閉めた直後聞こえた彼女の泣き声に、階段を降りる足が止まる
年下なのに生意気で
上から目線な態度で
だけどどこか憎めなくて
いつも馬鹿にしたような笑顔の彼女
だけどその笑顔の裏には悲しみが隠れていた
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