黒猫
□黒猫
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どこに居るんだ
ここには居ねェのか
頼む…間に合ってくれ
煩いくらい脈打つ心臓が更に不安を掻き立てる
額から流れ落ちる汗を拭う事なく走る土方の姿を沖田は無表情で見つめた
そして言葉を発せようと開いた口を閉ざして自分も走る
“なに必死になってるんですかィ――”
土方に言おうとした言葉は
今の自分と同じだと思った
初めて会った時、
何て自信たっぷりに笑うんだと思った
寝顔は凄く幼くて…なのに目が覚めたら生意気で
だけど一瞬見せた悲しげな顔を見て
嬉しくねェだなんて…
胸が痛んだのなんて…
初めてだった
邪魔するなと言い残して去って行った少女
全部が俺を苛立たせる
またあの自信たっぷりな笑みを見る為だったら邪魔でも何でもしてやりまさァ
――スパンッ
土方はまた襖を開けた
「…!!」
その瞬間目を見開いて固まる
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