黒猫
□黒猫
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襖に掛けた手をそのままに部屋の中を見つめたままの土方
そんな姿に沖田はポケットに手を入れると携帯を取り出し
ボタンを押した
土方の目に映ったのは
腰まで脱げ落ちた藍色の着物
そして白い背中を露にさせた少女の小さな後ろ姿
間に合わなかった…
土方は拳を震わせた
部屋の中に足を踏み入れれば少女の近くの布団の中で眠る裸の男
そして乱れた布団の隙間から見えた赤い斑点――
「…ッ…!」
殺気が込み上げて来るのが分かった
だけど窓を見つめたまま動かない少女に
その気持ちは静かに消え失せていく
「鈴…」
聞こえていないのか視線は相変わらず窓の外
「……鈴っ!」
『やッ…』
肩に手を置いた瞬間、身体を震わせ怯えた目が土方を映す
「何も、しねェから…」
小さく呟くと脱いだ上着を頭に掛けてやった
すると正気を取り戻したのか
上着から顔を出し驚いた表情で土方を見る
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