眠り姫の夢
□欲張り
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『――ねぇキバ』
隣から聞こえた
小声だけど弾んだ声
俺はボーと前を見ていた顔を横に向けた
「何だよ名無しさん」
『そのシャーペン書きやすそう。ねぇ頂戴?』
名無しさんは人懐っこい笑顔で俺が手に持ってたシャーペンを見つめる
俺もそれを見つめる
使い古した青いシャーペン
特に気に入ってる訳でもねぇし
代わりなら他にもある
「別にいいぜ」
俺はそう言って名無しさんにシャーペンをあげた
『わぁー、ありがとぉ』
名無しさんはさっきよりも笑顔になって嬉しそうに黒板を見つめ
ついさっきまで俺が使ってたシャーペンを使い始めた
『ハァ…上手く的に当たらないなぁ』
数メートル先の木を見つめ嘆いている名無しさん
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