最後の恋

□05話
1ページ/10ページ




『トーシ!』



朝稽古が終わり道場を出た土方の目に映ったのは



着物を肘まで捲り上げた



白いカゴを抱える葵の姿だった




だけどその顔はいつものウザすぎる笑顔じゃなくて



ちょっとむくれたような怒った表情




土方は不思議に思いながらも眉間に皺を寄せた




「んだよ…」



『とっちゃんて、誰ですか?』




理解出来ない言葉



というより聞き覚えのない名前




『昨日聞くのつい忘れちゃって!あー思い出して良かった。で、誰なんですか?』



「知らねーよ、んな名前の奴」




頬を膨らませて見上げて来る葵に低い声で返した




『しらばっくれても駄目ですからねー!昨日の夜ディナーを楽しんでたのは知ってるんですから!』



「………は?」



『隊士には幕府の会合なんて嘘ついちゃってさー』




ブツブツ呟く葵にやっと話が読めて来た土方




『近藤さんと沖田さんと一緒にとっちゃんて女の人と――「とっちゃんじゃなくて、とっつぁんですぜ」




二人の空間に聞こえて来た第三者の声




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ