『ダメだと思ったあの瞬間』




こりゃダメだ。

そう思ったね、あん時は。




普段から生活態度がだらしないのは自他共に認めるが、ここまでくるとヤバい。

自宅で行き倒れるって凄いな俺。

死にかけてる時なのに、逆に頭が冴えて色々考える。

これがいわゆる走馬灯?とかアホなこと考えながら自分がゆっくりと死に近づいているのを実感してたら、何か大きな音が聞こえた。

閉じていた目を開けるのも億劫だったから、何の音なのか確かめなかった。

すると、すぐに誰かに抱き起こされた。

そいつは何も言わず俺を抱き上げるとそのまま移動する。

そこまでで俺の意識は雲散霧消した。

この状況で四文字熟語が言える俺ってすごくね!?とか思う元気はギリギリあったけどそれ以上は保たなかった。











「とっとと食え」

何が起こってんのか理解できず、あ然としていたら男がぶっきらぼうに言う。

俺を飢餓から救い出してくれたのは隣人だった。

そして目の前には豪華なご飯のオンパレード。

え?もしかしてここ天国?

って思ってしまうくらい楽園何スけど!?

とか思いつつ、恐らく隣人作成の料理をかき込む。

これが見た目通り旨いんだ!

嫁に欲しいとか男にキモイことを考えるくらい俺好みの料理にちょっと涙目になりつつ完食。

その間男はじーっと俺を見てたらしい。

食べ終わるまで気づかなかったけど。

「あー…ごちそう様でした。マジうまかったッス。ありがとうございました。本気で死にかけてたんで、あなたは命の恩人です!」

無言で見つめるだけの男に気まずくなってとにかくお礼とか色々言ってみる。

「別に」

ちょっと目線をそらしながら言われた言葉はぶっきらぼうだったけど、俺の言葉か嬉しかったのか耳の先が赤くなってる。

そんな変化に、乙女か!!と普段ならツッコミをするところだけど、イケメンな隣人がやると何か分からんが格好良い。

ちくしょうイケメン爆発しろ。とか考えてないんだからね!

しかし、そういえば……。

「なぁなぁ、しつもーん。なんで俺が死にかけてんの分かったん?」

軽い口調でふと気になった事を聞いてみた。

途端、正面の体がビクッと分かりやすく動揺を見せる。

あ、とかその、とかえぇっと、とかもごもご何か言おうとしてるけど全然分かんないから。

だんだん隣人のあまりの動揺っぷりに虐めてるような気になってくるし。

「俺…アンタのことが好きなんだ」

とうとう話すか!?と思ったら違う話になってるし。
俺が聞きたいのは何で俺が死にかけてんのが分かったかだ!
アンタ好きな相手のことなら何でもわかるエスパーか!?

……ってえぇ!?

男からの告白という有り得ないことに脳みそが上手く動かなかったけど、好きってあの好き!?

確認したらlikeじゃなくてloveらしいです。

「好きだからアンタの隣に越してきたし、その……盗聴とかその……」

そこまでいったらもう分かった。もう何も言うな。

どうやら隣人は俺のストーカーだったようです。

「すまん。気持ち悪いよな…。気持ちを伝えられただけで本望だ。もう二度と目の前には現れないから」

本人必死すぎて気づいてないかも知んないけど、涙目になってる。

イケメンで、多分俺よりガタイも良くて、家事スキルもべらぼうに高い。
そんな高物件な男が俺を好きだって。

男に好きとか言われても気持ち悪いだけだと思ったのに、目の前の隣人に言われると、キモイよりもビックリが大きくて……。
デカい図体してんのにビクビクプルプルしながら告白してくる姿は何か……かわ、可愛、い?

自分の思考に戸惑っていると、隣人は何か勘違いしたようでますます泣きそうになっている。

その情けない姿がますます可愛くてムラムラしてきた。
俺ってSっ気あったんだ。

「うん、分かった。……付き合おう!!」

告白を承諾した旨を叫び気味に伝えると、さっきの俺みたいにポカンと惚けてる。

その表情が可愛くて我慢できなかった俺はそのまま隣人を押し倒した。





これからよろしくね〜♪

う、あ、こ…こちらこそ………。




〜END






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