Arcifanfano

□閑話2〜昏睡と届かぬ謝罪〜
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風side


 全員の体力測定テストから5日が経ち、本日は訓練も無く体を休めるための休養日。
 ただ闇雲に鍛えれば良いよいうものでも無いですからね。その辺りの配分の仕方は流石ラルと言ったところでしょう。
 体力テストをした日とは違い死ぬ気の炎をあれから使っていないとはいえ、だからといって楽な訳がありません。
 むしろ死ぬ気の炎を使いこなせるようになるための基礎特訓なのですから、適度に休憩を挟んで気絶出来ない分生徒の皆さんは今の方が辛いかもしれませんね。
 しかし休養を取るとは言っても、休み方1つで回復量や訓練の成果を身に固着させるスピードも変わってきます。
 全員が本能的に正しい休養を取るためには、このくらいの間隔が丁度いいでしょう。
 私も武人ですからね。そのくらいは心得ています。

 そして本日は、休養が必要な彼ら以外の人数で綱吉君のお見舞いに来ました。
 と言っても全員では無く、行くのは雲雀恭弥と六道骸、クローム髑髏、三浦ハル、笹川京子、黒川花、リボーン、ユニ、私の9人です。
 他の皆さんにはそれぞれの組織がありますからね。
 ヴァリアーとラルはボンゴレ本部へ。ヴェルデとスカルはそれぞれのファミリーへ。コロネロはマフィアランドに一時帰国しています。


京「ツナ君……」

 綱吉君の病室はこの病院の中でも一番広い個室。
 その真っ白い空間の真ん中にあるベッドで、相も変わらず静かに眠り続ける綱吉君。
 笹川京子が掛布団の中に仕舞われた綱吉君の手を握っても、何の反応も返さない。
 持ち上げられたその白かった腕は紫や黄色の痣で彩られ、痛々しく腫れ上がっていた。


三「ツナさんっ!」

 三浦ハルは力が抜けたように座り込み、両手で顔を覆う。
 その隙間から溢れた涙が伝い、リノリウムの床にぽたぽたと落ちていった。
 黒川花は近付くことも出来ないよう。
 壁に背を預けて視線を逸らし、体の横に垂らした手を強く握りしめています。

 そんな彼女らの様子を何とはなしに眺めて、再度綱吉君の眠るベッドに視線を向けた。
 …恐らくあの腕は。いや、腕だけでなくほぼ全身。怪我の痕は一生彼の体から消える事は無いでしょう。
 勿論マフィアなんてものをしていれば、消えない怪我なんてものはいくらでもあります。珍しい物ではありません。
 中には裏切りや虐殺で付いた、憎らしい傷もあるでしょう。名指ししてしまいますが、六道骸だってその内の1人だ。
 それでも彼の傷だけは、少しでも癒えてほしいと願ってしまうのは我儘でしょうか?


ユ「…私、花瓶のお水を変えてきますね」

 ユニは窓際に置いてあった花瓶を2つ持ち、静かに微笑む。
 私は歩き出そうとするユニの手から花瓶を1つ取り上げ、病室内を見渡して小さく肩を竦めてから扉を開けた。

風「1人で2つは大変でしょう?私も手伝いますよ」
ユ「ありがとうございます」


 病室を出る寸前、チラリと視線を室内に向けたユニに倣って私も視線をリボーンに向ける。
 その向けられた視線の意味を分かっているのでしょう。リボーンは私達2人に小さく頷いて返した。
 病院内の廊下は言うほど静かでは無いのが常ですが、このフロアは人払いをしてあるので私達2人の足音だけが響いています。
 そう離れていない廊下にある水道。足音の代わりに水音が響くこの場所に、小さな溜息が加わった。

ユ「思わず出て来てしまいましたけれど…大丈夫でしょうか?」
風「多少心配は残りますが、リボーンが居ますし大丈夫でしょう」
ユ「だと良いのですが」


 再度小さく溜息を吐くユニに苦笑を返し、殊更ゆっくりと花瓶の水を変える。
 きっと私達が残るよりも、彼らの事をよく把握しているリボーンが残った方が上手くいくでしょう。

 さて、あちらはどうなっているのでしょうか?





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