番外編

□俺が君に惹かれた理由
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 初めは、脆い奴だと思った。話を聞いて、純粋だと感じた。一緒に過ごして、その存在が愛しくなった
 くるくると変わる愛らしい表情と、くるくると変わるあいつに向けた感情
 あいつが欲しいと思ったのは、いつからだったか…




 初めて綱吉を見た時は、本当に脆い奴じゃと思った。ボロボロの体に細い手足
 まるで硝子細工のようなそれは、落としたら割れてしまいそうな儚さと危うさが存在していて
 だけど捕まえておかんと何処かへ消えて行ってしまいそうな不安定さが、確かにあった


仁「のう。綱吉は、イタくないんか?」
綱「へ?」

 唐突にかけられた問いに、綱吉は間抜けな声を発してキョトンとした表情を浮かべる
 確かに突然すぎたかもしれん。そう思い直して、もう少し説明してやることにした


仁「じゃけん、いっつも並中生に暴力振るわれとるじゃろ?痛くは無いんか、痛いなら何でまだ学校行くんか、っての」
綱「は、あ……」

 うーん、と唸りながら考える綱吉を、急かすでもなく静かに待つ
 少しして、考えが纏まったのか顔を上げた綱吉に話を促した


綱「痛くない、なんて事はありません。凄く痛いですし、辛いです。でも、俺は馬鹿だから。たとえどんなに傷つけられても、どんなに拒絶されても皆の事が大好きだし、その皆と繋いでくれる学校には絶対に行きたいんです」

 そう言って、綱吉は小さく笑う
 瞬間的に、綱吉が嘘をついとるのには気付いた
 詐欺師と呼ばれる俺じゃ。嘘には敏感な方やし、綱吉は特に分かりやすい
 それでも、綱吉が悲しそうに笑うから。寂しそうに笑うから。俺にはそれを指摘することが出来んかった


仁「ほうか。けど、無茶だけはするなよ。俺らじゃって、綱吉が大好きじゃけんの」
綱「…はい。ありがとうございます」

 今度は少し嬉しそうに笑って、綱吉は自室に帰った
 それを見届けることなく、俺も客室の方へ足を動かす


 綱吉の心は、未だ並中生らの方を向いとるんじゃろう
 今“居たい”か聞いても、多分答えは俺らの望まん方じゃ
 なら、綱吉がこっちに“居たい”と思えるように。“痛く”ない場所に“居たい”と望めるように
 ひっそりこっそりと、外堀を固めていくとするかの

仁「詐欺師に隙を見せちゃ、いかんぜよ?」


 なあ?まだ見ぬ並中生達よ
 要らんと言うなら、俺らが貰うから

仁「せいぜい後悔するんだな」


 捨てた物が、必ずしも自分の元に戻ってくると思うなよ
 お前らが捨てた物は、一生返さん




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