Arcifanfano改

□ACT.2〜治療と笑顔〜
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跡部景吾side


 ここ暫く会えていなかったからか、久しぶりに見れた綱吉の笑顔。
 優しくて見ているだけで温かい気持ちになれる笑顔に、先程までのささくれ立っていた感情が凪いでいくのを感じる。

 あーあ、どうしてくれんだよ。まーたライバルが増えちまったじゃねぇか。
 多分、というかほぼ確実に、今此処に居る奴らは綱吉の笑顔で落ちたな。
 その証拠に何人か顔が赤いし、そうじゃない奴も目を逸らした。
 全員が全員恋愛感情という訳ではないだろう。そもそもが男同士だし、弟みたいに思う奴だっている。
 だけどそれを向けられている本人は無意識し鈍感で、どちらの気持ちにも気付いてないから余計にたちが悪い。


幸「…俺も、忠告に行くときは付いて行って良いかな?」
跡「アーン?何だ、急に」

 コイツらは今日、偶然会っただけの関係の筈だ。綱吉の事情とは無関係で、わざわざ危険を冒す必要は無い。
 だというのに、そんな奴らが敵地に一緒に行くだと?
 それがただの恋情に惹かれたから、というだけなら断らなければならない。
 気持ちは分からないでもないが、それだけ相手は危険な奴らなんだから。

幸「うーん。まぁ確かに、その気持ちがあるのは否定しないんだけど」
跡「っ!!?テメッ、人の思考読むな!」
幸「え?わざわざ跡部の思考なんて読まないよ?勝手に聞こえてくるんだから仕方ないだろう?」


 ニッコリと薄ら寒い笑顔を真正面から向けられて、思わず一歩足を引く。
 ったく。鳳といいジローといいコイツといい、何で黒属が3人も居んだよ。
 思考を読まれるのは決していい気分にはならないってのに。

芥「跡部酷いC〜!あっ俺も行く!行きたいー!」
鳳「そうですよ、本当に酷いですねぇ。勿論、俺も行きますよ」
跡「っは!?お前ら勝手に…」


 思わず荒げた声に、宍戸達と話していた綱吉がこちらを振り向いて首を傾げる。その様子に、次いで出る筈だった言葉が喉で止まった。
 こいつらが来るにしろ来ないにしろ、綱吉には気付かれてはならない。
 巻き込んだと傷つくのは綱吉で、そんな事は誰も望んじゃいないんだ。
 …それにまあ、コイツらが居ればある意味怖いものは無い。
 一応応援は呼ぶつもりだったが、それでも安全策は多い方がいいだろう。


幸「何でもないよ沢田君。ただ俺としては、沢田君が気に入ったんだよねって話をしていただけ」
跡「なっ!?」
綱「え…俺が?」

 キョトンと目を瞬いて、自分を指差す綱吉に幸村は更に笑みを深くする。
 咄嗟に誤魔化したのは感謝するが、その表情に今の言葉。じわりとした嫌な予感が背筋を撫でた。
 コイツまさか…綱吉の事本気で狙っていくつもりじゃあ…


幸「凄いね跡部、正解。あっ今度から俺も沢田君のこと、綱吉って呼んでもいいかい?」
鳳「あっ僕も」
芥「俺はツナって呼ぶC〜!」
綱「あっハイ、皆さん好きに呼んで下さい」

 言葉の意味は理解していないのだろう。
 綱吉は首を傾げつつも、名前で呼んでもらえるのが嬉しいのか照れくさそうに笑みを浮かべる。
 へにゃりと下がった眉と紅潮した頬が可愛らしくて、自身の頬も若干熱く感じたのは多分俺だけじゃない。
 だから俺以外に、むやみに笑顔を向けるな!!




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