Arcifanfano改

□ACT.2〜治療と笑顔〜
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沢田綱吉side


 幸村さんの言葉に他の人達も便乗し、結局呼び名は全員下の名前で呼んでくれる事になった。
 その後改めて自己紹介もしてもらい、俺も皆さんから名前で呼ぶように言ってもらえた嬉しさに頬が緩む。
 もう名前で呼んでくれる友人なんて出来ないって諦めていたから、やっぱり嬉しいなぁ。


宍「ツナ。明日、リョーマも来るってさ」
綱「え…リョーマも?リョーマって東京でしょ!?…大丈夫かな」
宍「だーかーら!お前は人の心配より自分の心配をしてろ!!」
綱「ぁわわ!ちょっ亮兄!!」

 暫く誰かと電話をすると言って外に居た亮兄が戻って来るなり言った言葉に、思わず申し訳なさから視線が下がる。
 そんな俺を亮兄は元気付けようとしたのか、頭を掴むとグリグリといつものノリで下に押した。
 ちょっ!気遣いは嬉しいけど止めて!身長縮んじゃう!!


侑「せや、謙也と白石も朝一の新幹線で来る言うてたで」
綱「謙兄と蔵兄も!?だって二人共…大阪に居るんじゃ…」
侑「皆、ツナが大事で心配なんよ。謙也なんか3日に1遍、ツナは元気かーって俺にまで連絡きてたしな」
綱「謙兄らしいね」

 でも東京から来るのですらそれなりに金額は掛かるのに、大阪からなんて時間も交通費も桁違いだろう。
 きっと皆は気にするなって言ってくれる。でもそれに甘えちゃいけない。
 俺は3人…いや、皆に迷惑をかけているんだ。


跡「言っとくがな、俺様達、誰も迷惑だなんて思ってねぇよ」
綱「何で…」
跡「バーカ。お前は直ぐ顔に出るからな」

 喉の奥で笑った景兄が、俺の額を人差し指で弾く。そ…そんなに分かりやすいのかな…?
 思わず両手を弾かれた額に添えて考えるも、自分では分からない。


跡「此処に居る全員、好きでやってんだ。迷惑だって思うなら、そもそも此処まで来ようとなんてしない。心配なだけなら電話だけで済ますさ。それでも俺達が来たのは、一目でもお前の無事な姿をこの目で確認したかったからだ」
綱「景兄…」
跡「だから綱吉が心配することじゃねぇよ。それに悪いと思うなら、アイツらが来た時に元気に笑ってやれ。それが一番嬉しいだろうさ」
綱「うん…ありがとう景兄」

 心がふわりと軽くなった。こういう、自然と人の心を持ち上げる事が出来るから、やっぱり景兄には敵わないなと思う。
 嬉しい。そう、嬉しいんだ。何だかんだ考えつつも、自分を気にかけてくれる人がいる。自分に笑いかけてくれる人がいる。
 此処に居る人達の殆どが、今日初めて会ったにも関わらず、俺の言葉をちゃんと聞いて、俺を信じてくれた。
 それは俺の話しか聞いてないからかもしれない。もし羽花さんの話を聞けば、考えが変わってしまうかもしれない。
 それでも何も知らない俺の為にここまでしてくれる人達なんだ。昔からの友人とはいえ、こんな時間に神奈川まで駆けつけてくれる友人なんだ。
 だから俺も…この人達だけは信じたい。裏切られる恐怖なんて忘れて、伸ばされた手に縋り付きたいと、自然とそう思えた。


宍「むしろツナから掛けられる迷惑なら、喜んで巻き込まれに行くけどな。普段我儘すら言ってくれねぇんだし」
綱「え?…じゃあ一つだけ我が儘、言っちゃおうかな?」
侑「お?何や、言うてみぃ!」
綱「えっと…今日寝るとき、誰か一緒に居てほしいかなー…なんて。ちょっと寂しくて…」

 亮兄の言葉に便乗して冗談っぽく言ってみるも、やっぱり恥ずかしくて声が小さくなる。
 すると先程までそれなりに賑やかだった室内が、急にシーンと静まり返った。
 あ、あれ?皆黙っちゃった?やっぱダメだったかな!?
 うわぁ…嫌われたらどうしよう…!


跡「綱吉」
綱「あぅ…ご、ごめんなさい!やっぱダメだよね…?そんな子供みたいな…」
跡「お前は…もっと人に頼れ!甘えろ!!」
綱「うえ!?」
幸「そうだよ、それくらいじゃ我が儘とは言わないよ。あっ、俺が一緒に寝てあげる」
宍「っ!?ダメだ!!お前は危ねぇ!!しかもツナは寝てくれとは言ってねぇぞ!!」
幸「ああ、しまった…つい願望が…」
跡「お前は忍足か!!」
侑「っけ、景ちゃん酷いわぁ…」
跡「景ちゃんって呼ぶな!!」




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