Arcifanfano改

□ACT.2〜治療と笑顔〜
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忍足侑士side


 その日はいつもとなんら変わらん日やった。いつも通りに登校して、いつも通りに授業受けて、いつも通りに部活して。
 珍しくミーティングが長引いたんやけど、それでも変わらず、いつも通りに帰宅するんやと思っとった。そう、疑わんかった。
 校門に辿り着いた際に響いた、着信が無ければ。



PiPiPiPiPiPi…


向「ん?誰か携帯鳴ってるぞ」
侑「あ、俺や。マナー付けるん忘れとったわ」

 岳人の指摘に携帯を取り出してみれば、画面に映ったんわ着信中の文字と、その下にある相手の名前。
 意外な相手に思わず立ち止まっとると、すぐ後ろを歩いとった岳人が俺の背中にぶつかる。
 その衝撃に手の中の携帯を取り落としそうになって持ち直しとると、岳人より更に後ろにおった跡部も追い付いて立ち止まったままの俺の手元の携帯を覗き込んだ。


向「クソクソ!何してんだよ侑士!」
跡「アーン?立海の柳生か。いつまで固まってんだ。さっさと出てやれ」
侑「あ、あぁ…」

 跡部に促され、未だ鳴りつづける着信音に疑問を持ちつつも電話に出る。
 こんな遅い時間の着信。しかもすぐ出ておらんにも拘らず、長い間鳴りっぱなしの携帯。紳士言われとる普段の柳生からは考えられんその行動に、小さく首を捻った。
 何かあったんやろか?考え過ぎやったらええんやけど…


《もしもし?立海の柳生ですが、今お時間大丈夫ですか?》
侑「構へんで。どないしたん?自分が電話なんか珍しいやんか」

 柳生とは馬が合うたんか、普段からよくメールはしとる。まぁ互いのパートナーの愚痴が内容の大半やけど。
 せやけど互いにテニスで忙しいんが分かっとるから、都合が良い時に返せるメールでしか連絡は取らへんかった。電話なんて、交換こそしとったけど初めてやと思う。
 それがこんな時間に、しかも電話での連絡。何かあるん思うのは、当然やろ?


《はい。実は…忍足さんに、今すぐこちらに赴いていただきたいのですが…》
侑「はぁ!?」

 突然すぎる要望に、思わず声を荒げて驚く。隣で話を聞こうとしとった岳人が耳抑えとるけど、今は無視や。
 せやけど、さっきから柳生らしない。こんな時間に電話した思たら、今度は神奈川まで来いて…
 ホンマに柳生か?


侑「自分、ホンマに柳生か?」
《え?ええ。そうですが…。…ああ、仁王君では無いかと思われてるのですね。私は確かに柳生ですよ》
侑「せやかて、さっきから自分らしない事ばっか言うからな…。まぁええわ。で?理由は何なん?」
《実は本日赴いた並盛にて、かなりの怪我を負った方を見付けまして。病院に連れて行くには少し怪我の種類が…なんと言いますか、あまり公に出来なさそうなものなんです。しかしかと言って私達で治療するには怪我が酷すぎるので》

 そこまで聞いて漸く合点がいく。つまり、その人間の治療を俺にしてほしいっちゅー訳なんやな。
 なんや面倒事に巻き込まれそうな気もするが、ここで断る程冷酷なつもりはあらへんし、仕方ないやろう。
 氷帝と立海が、何の因果か休日が同じなんは前にメールしたから知っとったやろうし。


侑「ん、そういう事なら構へんで。ちょい時間かかるが、今からそっち向かう。で?場所と患者の名前教えてくれんか?」
《ありがとうございます。場所は切原君の家で…住所は後ほどメールで送りますね。患者の名前は、沢田綱吉さんです》

 まぁ口答で説明されるよりは、メールの方が助かるわな。
 忘れんで済むし、何回か見直せるし……って、あれ…?今、何て言うた?
 聞き間違いやなかったら、患者の名前…〈沢田綱吉〉言わんかったか?


侑「……ツ、ナ?」
《はい?》
侑「今…沢田綱吉言うたか?」
《えぇ。知り合いですか?》
侑「っ重傷なんか!?何で、何でツナが怪我しとるんや!!」
《!?お、落ち着いてください!》
侑「〜〜っ!!今直ぐ向かうわ!」

 内心の焦りをそのままに、多少乱暴に電源ボタンを押して鞄に突っ込む。
 なんで…何でツナが怪我しとるんや!!守護者は、リボーンはどないしてん!!
 一体何が起こっとるんや!!




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