*バレンタイン!(当日編)
「シ…シン様っ!チョコ、貰ってくださいっ!」
「クス…ありがとう。美味しく頂くよ、子猫ちゃん」
「ヒイロ君っ!こ、これ…!」
「お、おお俺に?!サ…サンキューな!」
「マキ様!」
「ん?」
「良かったら食べてください!」
「おー、ありがたく頂くぜ(俺、女なんだけどな…)」
マキ、ヒイロ、シンの3人組…もといスリートップは道端で女の子に囲まれていた。
三者三様な受け取り方だが、共通しているのは両手に紙袋を提げていることくらいだ。
「いやあ、イイ男は大変だねえ」
ーーツバキ達がお菓子作りに奮闘している時に時間は遡る。
「つーか、なんで俺等を誘ったんだよ!シン1人で歩いてりゃいいだろーが!!」
シンに家から引きずり出され不満気なヒイロ。しかし、チョコを貰うのは満更ではないのかちゃっかり全部貰っていた。
2人の両手の紙袋は女の子から貰ったチョコレートでいっぱいだった。
「あれ?もしかして予定でもあったワケ?…テンテンからチョコ貰うとか」
「ち、ちげーよ!!…って、マキは何で文句言わねーんだ?!」
シンにこれ以上いじられるのを回避したいヒイロの矛先はマキへ。マキもヒイロと同様にシンに引きずり出されたのだった。
マキといえば普段は無表情なのだが、今日は普段から締まりない表情だった。
「ん?だって今日はバレンタインだぜ?」
「お前って甘いモン好きだったか?」
「いや、普通」
「分かってないねえ、ヒイロは。マキは姫様にチョコを催促しに行くつもりなんだっつーの」
「…成る程」
シンの説明に、だから機嫌がいいのかと納得したヒイロ。
だが、マキはニヒルな笑みを浮かべて首を横に振る。
「フッ…甘い!バレンタインのチョコより甘い!!」
「「は?」」
「ツバキにはもうチョコを貰う予約をしてあるに決まってんだろーが!」
((うわあ…))
アポ済みだと無駄にかっこよく言い放つマキだが、2人には台詞の中身のせいかカッコ悪く見えた。遠巻きに見て居た女子の中にはキャーッと黄色い声をあげるものもいたけれど。
恐るべき、ツバキ溺愛っぷりだ。
「…さて、俺はツバキのトコに行くかな」
「んじゃあ、俺等も……って刀向けるなよ!冗談だっつーの!」
「ツバキのチョコは全部俺のモノだからな!ツバキから貰ったら…刀の錆にしてやる」
((目がマジだ…!!))
そして、今年も結局ツバキからのチョコはもらえない(貰いにいけない)シンとヒイロだった。
ーーーー
「やっぱネジ様には渡せないよね〜…こんなの」
可愛い袋に小分けしたクッキーを見つめながらため息をつくサナエ。
それでもクッキーのイビツな形は変わらない。
「あっ!ナルトー!!」
金髪の目立つ彼を見つけ、サナエは手を振って駆け寄る。
そこには、ナルトだけでなくサクラ、サスケといったカカシ班にアスマ班や紅班といったルーキー達が集まっていた。
「サナエ!」
「やあやあ!可愛い後輩達よ!
皆のアイドルサナエちゃん参上!!」
先程までの憂鬱さが伺えないくらいのハイテンションでポーズまで決めるサナエ。
ルーキー達は若干白い目で彼女を見た。
「またテンション高いな…」
「これが標準状態なんだよ!悪いね!」
「「「…」」」
「で?後輩達は何を集まってキャピキャピしてんのさ?」
「あたしはサスケ君にチョコを渡しに!」
「そんなことさせないわよ!」
「うっさいデコリンのくせに!」
「何ですって〜!?」
「おおふ…ガンバレ…」
サクラといののサスケ争奪戦にサナエはたじたじだ。ただし、原因がサクラ達かと言えば半分嘘になる気がする。
(ツバキがこの場にいなくて良かった!!)
「成る程ね〜、サスケっち以外のモテない野郎共は"バレンタインのチョコ貰えないの会"を開いてるんだ!」
「違うってばよ!つーか、何でサスケばっか!!」
「フン…吠えてろ、ウスラトンカチ」
「むきーーっ!!」
「仕方ないなあ。
そんなモテない野郎共にサナエ様が幸せを恵んでやろう!」
ほれ!とサナエはサスケ以外の男子にクッキーを渡す。
「…ええ〜」
「…食べれるのかコレ?」
「見た目はアレだけど多分大丈夫だってばよ!…多分」
「君たち、一度お世辞ってものを勉強しなさい。」
嗚呼、なんでこんなにも歯に衣着せぬ子達ばっかりが後輩なんだろうか。
テンション急降下気味なサナエ。
「お、俺は嬉しいぜ!サンキューな!」
「!!…キバ〜!君はなんていい子なんだっ!!」
少し顔を赤らめてサナエに礼を言うキバに感極まってサナエは抱きつく。
それに更にキバの顔は赤く染まる。
その様子を見てルーキー達はキバがサナエを好きなことを確信。
「キバ!サナエから離れろってばよ!!」
「あ、ごめんごめん。
ていうかツバキとミウ、テンテンに教えてもらいながら作ったから味の保証はできるよ!」
「…ツバキ?」
「…。(ミウも作ったのか?)」
サナエの言葉に敏感に反応を示す2人。
サスケとシカマルだった。
「ん?そうだよー。ツバキも作ってたよ。我愛羅の為に」
「!」
「え?!さっサスケ君!?」
サナエの言葉にサスケは目を見開くと、瞬身の術で消えた。
サクラといのはサスケに渡すチョコレート片手に慌てる。
「(やりすぎたかな〜、ごめんツバキ!)さてさて。サナエさんは帰りますか〜」
そう言って踵を返すサナエ。
「あっ、ミウだったら今ごろ木の葉をあちこちでマフィン配ってるはずだよ」
シカマルにニヤニヤと笑いかけてから歩き出す。
(さあて、あたしは次の目的地へ行きますか!)