私の望は異世界トリップ 第2部

□第40話 私を全国へ連れてって
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私のは異世界トリップ
第40話 〜 私を全国へ連れてって 〜











この間、神奈川県大会が行われた。

マネージャーの私達も勿論同行し
皆の後ろからこっそり観戦してたけど、正直何もすることがなかった。

相手校はよく知らない人達で
決勝の相手『葉ノ宮中』は有名らしいけど…

1時間も経たないうちに終ってしまい
しかも、そうであって当然と言われてしまっては

相手が悪いとしか言いようがないけど、同情してしまう。






そんな県大会が過ぎたある日。

放課後の部活中、部室に戻ると面白い組み合わせと出くわした。






「蓮ニとブン太?どうしたの2人とも」




部室の中には蓮ニとブン太が何か話し合っているところだった。





「あぁ、関東大会に備えて少しな」

「…関東大会」





そっか。
県大会が終ったんだから、次は関東大会があるんだよね。

関東大会では、赤也が赤目になって不動峰の橘君を…。
手塚君も、跡部君との試合で肩を…。
治療の為に、九州かドイツに行っちゃうんだよね。



関東大会かぁ…。





「亜加里。もしかして心配してんのか?」




ボーっと突っ立っていた私に、ブン太が笑いを含んで言った。





「うー…うん。色々と…」





うん。色んな心配はある。

本当は、赤也に赤目になってほしくないとか
手塚君は九州に行った方が、電話も遊びに行くのにもいいんじゃないのかな?とか
精市は、原作では入院していたけどここでは普通にテニスをしてる。
関東大会に出るのかな?とか。






「んなの必要ねーって。俺達が負けるわけねーだろィ?」

「うん。そうだよね」






でも、決勝戦は…どうだろう?





曖昧に笑って、部室を出た。


洗濯物を取りに洗濯機へ向かう。


綺麗になったタオルを干しながら、やっぱり考えてしまう。




私は、できれば皆に勝ってもらいたい。

遅くてもいいから、赤也には普通に試合をしてもらいたい。





…まぁ、私がここで色々考えてたってどうにもならないんだけどね。


なるようになる!
とりあえず、皆に怪我がなければいいや。

…なんて言ったら、不動峰の皆と橘君と杏ちゃんに怒られるな。





浮いたり沈んだりする表情で、黙々とタオルを干す亜加里を
陰から見つめるのは丸井。


先程の部室での亜加里の様子が気になって見に来たのだ。










何で、亜加里は心配なんて言ったんだ…。

何で、俺達が負けると思うんだ…。




俺だって、考えた事無いわけじゃない。

だけど、県大会も、関東大会も勝って当たり前なんだぜ?



…そして、全国だって。










丸井はタオルを干し終わったのに、タオルを入れていた籠を抱えて
ボーっと空を見上げる亜加里に近づいた。






「亜加里」

「あ、ブン太。休憩?」

「ああ…」

「今日は天気いいね。洗濯物すぐ乾きそう」





相変わらずボーっと空を見上げる亜加里。






「亜加里…どうして俺達が負けるかもしれない、なんて思うんだよ」


「…え?」





突然の言葉に亜加里は驚いた。


丸井はとても真剣な顔をしている。








ああ、私が部室で曖昧な態度をとったから…。

彼を怒らせてしまったのか…?





皆は負けることなんて一切考えてない。
勝つ為に、努力してここまできたんだ。

優勝意外見えてないんだ。

私が、負けるかもしれない…そんな事を考えるのは
そんな皆に失礼な事なんだ。









見つめあう2人を更に見つめるのはレギュラー陣。


部室での言動に心配した柳が幸村に話したのだ。






「2人とも何話してるんスか?」

「亜加里が、俺達が関東大会で負けると思っちょるらしい」

「負けるわけないじゃないっスか!」





少し大きな声を出してしまった切原の口を急いで塞ぐのは柳生。






「2人に気付かれますよ」

「赤也声がでかいぞ!」

「真田の方が大きいよ」

「…すまん」








そんな声も姿も見えないので2人は気付かない。








「…ごめん。何でそんな事思ったんだろ?
皆が練習してるところ、見てたのにね。

勝つために練習を重ねてきたんだから



皆が負けるわけないよ。 優勝して全国に行くんだから!」







私は持っていた籠を強く握ってブン太にそう言っていた。





原作がなんだ!精市は入院してない!

試合結果だって変えればいいじゃないか!





そんな私にブン太は悪戯っぽく笑った。






「あたりまえだろィ」









「全国でも勿論優勝するがな」






言葉と共に頭に手を置かれた。

見上げると、弦一郎が微かにだけど、笑っているように見えた。






「そうっスよ。亜加里先輩は何も心配しないで俺の応援してください!」

「何でお前限定なんだよ!」





何時もの明るい口調で言う切原に、丸井は両手で切原の髪を掻き乱す。







「丸井、よく言ったのう。差し詰め『ブンちゃん』といったところか。
亜加里ちゃんを全国へ連れて行かんとな?」





ニヤニヤと笑い、ブン太に絡む仁王。





「何の話だよ?」





丸井の疑問に答える気は無いらしく、何時ものように


「プリッ」


と一言返すだけだった。






「俺達に死角はない。だけど油断は禁物だ。
練習を再開するよ!」





幸村の一言でそれぞれコートの方へ歩き出す。









「 皆で、全国で優勝しよう 」








皆の背中に向かって独り言みたいに小さく呟いたのに

その声は、皆に届いてて…。






『 あたりまえだろ 』





そう言うように、手をあげた。






そんな頼もしい皆の背中を見送って

私もマネージャー業を再開した。














「こんにちは、リト君」

「あ、井上さんこんにちは。取材ですか?」

「ああ、そうなんだけど。レギュラーの姿が見えないね?どうしたの?」

「あー、もう少ししたら戻ってくると思いますけど…。井上さん。青春っていいですね」

「どうしたんだい、いきなり」

「いやぁ〜、ウチの妹が南ちゃん状態で。青春っていいな、って思いまして」

「え?それって、亜加里ちゃんと部の誰かがそういう関係って事?」








ぅおおーい!人が洗濯物干してる間に何やってんだ!
南ちゃん状態ってなんだ!

井上さん、取材の話なんて聞いてないぞ!
そういう関係…ってやめてください!
中学生相手にいい年した大人が何言ってんですか!





私は洗濯籠を抱えたまま、リトと井上さんの下へ急いだ。









2010/11/18





ベタですみません。
関東大会前に県大会の話も書こうと思ったのですが
資料が…あまりにも不足していたので
急遽南ちゃんにお越しいただきました。

あと、井上さんを少し出したくて。






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