他人の恋には敏感で、自分の恋には臆病で・・・

□第13話 待ち人
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周りから見たら、もどかしく感じるかもしれませんね。

ですが

ここまで待ったんですから

ゆっくり、彼女との距離を縮めていきたいんです。


それに、今の関係も嫌いではないんですよ。

いつまでもこのままでいる気はありませんが…。









他人の恋には敏感で、
 自分の恋には臆病で・・・


 第13話 ち人










練習のために朝早く登校する運動部の生徒達。
テニス部である柳生もその1人。

校門を通った所で同じテニス部の仁王雅治が
気だるそうに歩いているのが見えた。




「仁王君。おはようございます」




柳生の声に振り向く仁王。




「お〜、おはようさん」



向かう場所は一緒なので
2人で部室まで歩いていく。





「昨日、桜さんと映画を観に行きましたよ」

「ほぅ、そうか」

「えぇ、桜さんが仁王君からチケットを貰ったと言ってました」

「あぁ、あれな。行けなくなったんよ」





互いに真っ直ぐ前を向き相手を見ようとしない。





「わざと…ですよね?」

「なにがじゃ?」

「桜さんに渡したのも、映画のジャンルも。
 私はあの映画を観たいと一言も言っていませんが?」

「……そうだったかの?
 誰か他の奴が言ってたのをお前さんが言ったと
 勘違いしたんじゃろ」

「貴方にしては苦しい言い訳ですね」



「うっ」と苦い顔をする仁王に
意地の悪い笑みを向ける柳生。





「…楽しかったか?」

「えぇ、おかげ様で」





2人の会話はここで終わった。










学校に着くと唯笑の姿は無かった。




『珍しいな』





普段亜加里より早く学校に来る唯笑だったが
今日はHRギリギリに教室へ入ってきた。

亜加里を見つけた唯笑は
鞄も置かずに亜加里の席まで来ると
溜息をつき




「柳生君が可哀相」





それだけを言って自分の席に戻っていった。




「へ…?何なの?」





何の事なのか、訊きに行こうと思ったけど
先生が教室に入ってきて
それはできなかった。



お昼。



唯笑は柳君とお昼を食べるために教室から出て行った。



何なのよ、もう。
柳生君が可哀相って、あたし何かしたのかな?

昨日の事を考えながら、購買に飲み物を買いに行く。

カフェオレを手に来た道を帰ろうとした時
後ろから声をかけられた。



振り向くと、ビニール袋を持った仁王君だった。











「あ、仁王君。
 この前は映画のチケットありがとう
 早速昨日観に行ったよ」

「そうか。
 なぁ、桜さんもこれから昼じゃろ?
 よかったら一緒に食べんか?
 その話もゆっくり聞きたいしな」

「…う、ん」






1人で食べる予定だったから
断る理由もなく、私は教室にお弁当を取りに戻り
仁王君が待つ裏庭に行った。

女の子達に絶大な?人気を誇る仁王君と一緒に
教室まで言ったら何を言われるか分からない。

そう思った私は、仁王君に先に行っててとお願いしたのだ。





「お待たせ」





仁王君は過ごしやすそうで尚且つ
人気がない木の下に座っていた。





「いい所じゃろ?」





笑って言う仁王君に




「うん。静かで
 授業サボって昼寝するのによさそうだね」





する気はないけど、と付け足して私も座った。





「俺はよくやっとる。
 たまに柳生に見つかって連れ戻されるが」




面白そうに笑う仁王君に
その画を想像した私もつられて笑った。

仁王君は菓子パンを、私はお弁当を広げ
昨日の事を話していく。




「誰と行ったん?」

「柳生君と。いやぁ怖かった」

「柳生どんな様子やった?」

「どうだろ?暗くて見えないし、映画に夢中だったから…
 普通だったと思うけど」

「クククッ、そうか」





何か面白かったのか
暫く仁王君は笑っていた。





「桜さんは、昨日楽しかったか?」

「うん、あたしは楽しかったけど…」

「けど?」

「うーん、あたし柳生君に何かしたのかもしれない」

「なんでそう思うん?」




あたしは今朝、唯笑に言われたことを仁王君に話した。





「あ〜…あれか?」

「何か知ってるの?」






仁王君は何か考えているようだった。

あたし、やっぱり何かやっちゃったんだ。
どうしよう?!





「いや、気にすることはないし
 桜さんは何もやっとらんよ」

「え、でも」

「よかよか」






結局その後仁王君は『ひよこ』になったり
話を変えられ
唯笑の言葉の意味は分からなかった。
直接本人に聞くしかないか。










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