他人の恋には敏感で、自分の恋には臆病で・・・

□彼の憂鬱
1ページ/1ページ





彼の





俺のダブルスパートナーの柳生に彼女ができた。

俺も気が付けば2人に関わっていて
今思うと、関わりすぎた…と後悔しちょる。



屋上で授業をサボリ昼まで寝てようとコンクリートの上に寝転がると
急に影ができた。

見上げると、柳生の彼女さんが俺のことを見下ろしていた。
ニコリ、と笑顔を貼り付けて。



彼女とは、2人が付き合う前から
一緒に昼飯食べたり、サボル仲となっていた。



「いいんかサボって。また柳生が煩いんじゃなか?」



俺は起き上がって彼女を見た。

彼女は俺の隣に腰を下ろした。



「バレなければ大丈夫だよ!」


「…一緒におるの知ったら、俺まで説教くらうんじゃが」

「お説教されるようなことしてるんだからしょうがないよ」



ポンっ。と俺の肩に手を置いて笑う彼女は
柳生がサボリにたいしてだけ説教すると思っちょるから厄介じゃ。



「今日はどうした?」

「う…。あの、さ…」


彼女は時々俺の所に来ては柳生の事で相談をする。
友達に相談すればよか。そう言ったが
「柳生君のこと知ってる仁王君に意見を聞きたいの!」
と言われて、ずるずる話を聞き続けてる俺がいる。



「あたしね、まだ柳生君のこと、苗字で呼んでるでしょう?
 何で名前で呼ばないの?って言われちゃってさ…。
 ずっとそう呼んできたから、意識してなかったけど
 名前で呼ぶべき…なのかな?」

「…友達に言われたんか?
 そんなもん、個人の自由じゃろ。
 呼びたくなったら呼んだらよか」



彼女の顔を横目で見ると驚いた顔をして俺を見ていた。



「…何か、感動した。そっかぁ…。
 でも、それでいいのかな?」

「お前さんが名前で呼ぶ気がないんならしょうがなか」

「呼ぶ気がないわけじゃないよ…ただ、苗字で呼ぶのがあたりまえで
 今更名前で呼ぶのは、恥ずかしくて…」

「…まぁ、ゆっくりやりんしゃい」


彼女の頭に手を置いて、ポンポンと軽くたたく。

何かを考え込んでいるのか、俯いたままの彼女。


そんな彼女に昨日の柳生との会話を話そうか迷った。






「お前さん達は何時まで苗字で呼び合っとるんじゃ?」


2人でシフト決めたんか?と問いたくなるほど
日替わりで俺の所に相談、惚気をしにくる2人にウンザリしてきた俺は
嬉々と彼女と過ごした休日の話を一方的に話す
キャラ変わったなぁ、な柳生に
少し皮肉を込めて言った。




「そうですね…。彼女が私の名前を呼べるようになったら、ですかね」


苦笑いで答えた柳生。


「なんじゃそりゃ」


「今は、彼女が私の傍にいてくれるだけで、いいんです。

 また逃げられてしまったら…彼女を捕まえるのは骨が折れるので」



何かを思い出すように言った柳生の言葉は
俺にはあまり理解できなかったが

柳生が彼女をどれ程大切にしているのかは分かる。




「お前さんは愛されとるのぉ」

「何?急に…」



不審がる彼女の頭をグシャグシャと撫でた。



後数分で、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り
友達から彼女が授業をサボった事を聞かされた柳生が
息を切らして屋上に来るだろう。





今日は彼女を盾に逃げさせてもらうぜよ。



お前の弱みを握っているという切り札もあるしな。









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ