ホラーお題 夢

□カーテンの隙間
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カーテンの隙間











最近俺は部活で、彼女の亜加里は委員会で忙しく
擦れ違いが多かった。

メールや電話のやり取りだけじゃ物足りない。

亜加里の顔が見たくなった俺は
寝る前に、亜加里にテレビ電話をかけた。





亜加里、出てくれるかな?







携帯を握って画面を見つめる。
数回呼び出した後、画面に亜加里の顔が映し出される。








「どうしたの?テレビ電話なんて…」

「亜加里の顔が見たくなって」








何度か入った事がある亜加里の部屋を背景に
初めて見るパジャマ姿の亜加里が首を傾げてる。


自分が言った言葉と、行動に少し恥ずかしくなる。





「最近会ってなかったもんね…。私も、ブン太に会いたいなって思ってたから…嬉しい」



微笑む亜加里が可愛くて、今からでも会いに行きたい衝動に駆られる。

だけど、それができないから電話をかけたんだ。

お互いの顔は見れても、この距離がもどかしい。





昨日も電話で話したのに、話題は尽きる事がなくて
時間はあっという間に過ぎていった。





時計を見ると、電話をかけてから1時間ほど経過していた。






ヤバイ。思ったより話しすぎた。
明日も学校あるし、そろそろ切らないとマズイよな…。






まだ亜加里と話していたいという気持ちを抑えて
亜加里におやすみを言おうと思った時






亜加里の部屋の窓。






亜加里の真後ろにある窓の閉められたカーテンが、動いたように見えた。








初めは気付かなかったけど、カーテンに少し隙間がある。






俺はたまにやるけど、亜加里は何時もきちんとカーテンを閉めている。
亜加里の部屋ではレースのカーテンしか閉まっている所を見たことはないけど
学校でカーテンを閉める時、隙間がないようにちゃんと閉めてる。








俺は何だかカーテンの隙間が気になって凝視してしまう。





すると、静かにカーテンが波打った。





窓を開けているのか?




いくら2階っていっても、窓を開けっ放しで寝るのは無用心だろう。
閉めるように言った方がいいな。






俺が亜加里に窓を閉めるように言おうとしたら








カーテンの隙間に、色ができた。






見づらい画面をよく見ると、カーテンの隙間に









人の顔があった。











「っ…!!」








なん、だよ、あれ!!









「どうしたの?ブン太?」








今まで楽しそうに学校で友達と話た事を喋っていた亜加里は
不思議そうに問いかけてきた。







「あ、何でもない。それで?どうしたんだよ?」







普通に、返事できた…と思う。












何だ。






何だ、あれ。





人の顔?





まさか、そんな。







窓の外に?






いや、





レースのカーテンは、昼間は外の様子が見えるけど






夜になって照明を点けると、外は見えない。





じゃあ、亜加里の部屋の中に居るっていうのか?!





どうする?





今、亜加里に知らせて振り向いた亜加里が叫んだら?




そいつは出てきて亜加里に何をするか分からない。





俺の家と亜加里の家は遠くないが

すぐに行けるほど、近くない。







どうする。








「なぁ、亜加里。今日家に誰か居るのか?」

「ううん。親は旅行行っちゃってて、お兄ちゃんは帰りが遅くなるって、まだ帰ってきてないんだ」









何でこんな時に!




…誰も居ない事を知っていたのか?!










「そっか。亜加里、今面白い番組やってんだけど
誰も居ないなら大丈夫だよな。テレビつけてみ?」

「えー何々?面白いのやってたっけ?」







そう言って亜加里は立ち上がる。




部屋にテレビがない亜加里は、リビングに行かなくてはテレビは観られない。










早く、早く、部屋から出てくれ!








部屋から出て、階段を下りる間も、俺は亜加里に話しかけ
亜加里の後ろが見えるようにした。






追いかけて来てはいないみたいだ。






階段を下りて廊下を歩き出した亜加里に、声を抑えて
なるべく冷静に言った。









「亜加里、今すぐ家から出るんだ」

「え?…何?どうしたのブン太」








俺の言っている事が分からない、と立ち止まる亜加里。









止まっちゃ駄目だ!早く家から出ないと!









「説明は後でする。頼む、早く家から出てくれ」








俺の真剣な様子に、何かを感じ取ったのか
亜加里は何も言わずに玄関から外に出た。








「亜加里、そこに居ちゃ駄目だ。
隣の家とか、とにかく人が居るところに行ってくれ!」

「ねぇ、ブン太。どういう事なの?説明して」

「今はまだ駄目だ!とにかく1人でいちゃ危険なんだよ!」

「危険って…あ、お兄ちゃんが帰ってきた」








亜加里のその言葉に、緊張の糸が切れて
泣きそうになる。






「どうした、亜加里。こんな時間に何処か行くのか?」






電話の向こうで、亜加里のお兄さんの声が聞こえる。







「それが…よく分からなくて」

「亜加里、これから説明するから。お兄さんにも聞こえるようにしてくれ」







亜加里は頷くと携帯の画面を2人で見えるように持っていった。



俺からは、心配そうな顔をした亜加里と、状況が分からないという顔をした亜加里のお兄さんの顔が見える。








「あ、ブン太君。こんばんは。どうしたの?」







亜加里のお兄さんとは家に遊びに言った時に何度か会っているために面識があった。








「こんばんは。あの、落ち着いてきいてください」









俺は、亜加里の部屋のカーテンの隙間に見えた顔の事

亜加里に気付かれないようにして、家の外に出した事を話した。








亜加里は今にも泣きそうな顔をして、お兄さんの腕にしがみついている。
お兄さんは信じられないという表情で、家を見上げている。








「とりあえず、2人は安全な所に。俺から警察に連絡します」

「あ、…ああ。ごめん。よろしく頼む」









電話を切って、急いで警察に電話して事情を説明した。



その後亜加里に電話をすると、お隣の人に話して
家に上がらせてもらっていると言った。










その後、警察が来て

亜加里の部屋に身を潜めていた男が逮捕された。




家に誰もいない事を知って強盗に入ったと供述している。




旅行に行っていた両親も急いで帰って来て


家に1人でいる事がないようにする事と
戸締りが徹底される事になった。と亜加里が話していた。












あの時、俺がテレビ電話ではなく、普通に電話をかけていたらどうなっていたのだろう。







気付かずに、電話を切っていたらどうなっていたのだろう。








そう考えただけで鳥肌が立つ。





俺と亜加里の間で、電話より、メールより


テレビ電話の回数が多くなったのは









その仮説が…



あの時の恐怖が…




拭いきれない為。












2010/11/11




























ポッキーの日。(笑)







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