福本さん作品 夢

□犬派と猫派 〜共生の場合〜
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「隼さんって、見た目どっちかって言うと猫っぽいけど
猫派ですか?犬派ですか?」

「…見た目猫って」



ソファで寛いでいた俺に突然そんな質問をしてきた同僚の姿を見る。
何時の間に部屋に入ったのか、向かいのソファに座って俺を見ている。



「…。お前はどっちかって言うと見た目犬だな」

「そうですか?」



にこり、と笑いながら首を傾げる様は
主人の帰りを大人しく待っている犬を彷彿とさせるのだ。



「そうだな…やっぱ、犬だな」

「へぇ、隼さんは犬派ですか」



少し驚いたような声で返事が返ってきた。
猫派だと思っていたのか?



「私、猫派なんですよ〜」

「ふーん」

「反応薄いですねぇ」



そんなの個人の好みだろう。
何て言えばいいんだよ。



「犬も可愛いですが、猫も可愛いと思いません?」

「可愛くないとは言ってないだろ」

「じゃぁ、猫も好きということですよね?」

「嫌いじゃない」



なんなんだこいつは。
だんだん可愛らしかった笑顔が、何か企んでいる様な笑顔に変わっていったように見えた。



「隼さん!猫を飼ってみませんか?!」

「…いい」



行き成り身を乗り出し、真剣な顔で言ってきた同僚に短く拒否の言葉を返す。



「えぇ!何で?!」

「俺、犬派だしな」



面倒な事になりそうだったから、この話はこれでお終い、という意味を込めて
同僚に背を向けて横になった。



「そんな事言わずに!この機会に猫の可愛らしさを新発見して
猫派デビューしてみません?」

「しないしない」



出て行ってくれ、と手をひらひらと振るが
同僚はソファから立ち上がると俺の横にきて体を揺すりはじめた。



「隼さん、真面目に考えてくださいよ!
子猫達の未来は隼さんにかかってるんですよ!!」

「はぁ?…何なんださっきから」



俺は渋々起き上がる。



「子猫の里親を探しているんです!
すっっごい可愛いんですけど私の所では飼えないんです…。
このままだと子猫達はっ!!」



悲しそうな視線を俺に投げかける。

やめてくれ。
そんな顔で見られても俺だって飼えないんだ。



「…はぁ、事情は分かった」

「それじゃあ!」

「だが、俺も飼えないぜ?」

「そんなぁ…」



しゅん。という効果音が似合う落ち込みように俺は頭を掻いた。



「飼ってくれる人見つからないのか?」

「探してるんですがなかなか…」

「…はぁ、俺も探してみるから」

「本当ですか!」



俯いていた顔を上げて目を輝かせている。

こういう所が犬っぽいんだよなぁ。



「その必要は無い」



ドアを開けてワシズ様が部屋に入ってきた。



「どういう事ですかワシズ様!」

「貰い手が見つかったそうじゃ」

「…よ、よかったぁ!ありがとうございますワシズ様!!」



ワシズ様に抱きつく同僚は飼い主にじゃれつく犬のようだった。



「ワシは何もしとらん。…が、仕事が手につかん程
飼い犬と飼い猫に寂しい思いをさせてしまったみたいだな」



そう言うとワシズ様は同僚を肩に担ぎ、動揺している俺を脇に抱えると
部屋を出て社長室へと向かって歩いた。



「ちょっ、ワシズ様?!」

「ワ、ワシズ様?…一体何を」



ワシズ様は器用に社長室のドアを開けた。





「カカカッ!2人纏めて相手にしてやろう」


『ぎゃあぁぁぁぁぁ!!』





閉められた社長室のドアの向こうから2人の悲鳴が聞こえたが
それを聞いたのは、用があって社長室に向かっていた本部長だけだっただろう。




















2011/10/13




 




 


 

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