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□おかえり
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「……えーっと……もしかして、天使とか?」


仕事が終わって、吹雪の中優雅に歩いて帰っている途中。


突然空から綺麗な蒼の羽根を広げて、男が降りて来た。
眠いからこんな幻覚を見るのだと、何度も目を擦る。


「俺様、霊感とか持った覚え無いんですけど……?」


一人呟き、また目の前の男を見る。
自分より少し年上だろうか?
綺麗な顔立ち、変な服装、興味を持つなと言う方が無理な話だった。


「ゼロス、なのか?」


弱々しい、揺らいでいる瞳。
唇から放たれた声は心地よく胸に染み渡る。


「まぁ確かに俺様の名前ではあるけど……誰から聞いたの?」


彼は所謂ホストで、ゼロスは仕事中に使う名前。
しかし野郎に教える名前ではない。
自分の客に男は居ないし、他店の従業員でも無さそうだし、考えられるのは客の彼氏か何かか?

考えられることを全て思考したが、男が蒼い羽根を持っていると言う現実には勝てそうにも無かった。

どう考えても人間ではない、そう自分の脳は告げている。



「そうか、やはり昔同様とはいかぬのだな」


延々と悩むゼロスを見て男は小さく笑った。
当然だ、きっとこの世界は自分が居ない間に幾億も季節を重ねたのだろう。
ゼロスも自分の知っているゼロスではないと分かっていた筈だ。

それでも彼の前に降り立った理由は一つだけ。
ゼロスが待ってると言ったから。
全てが終わり、何も無くなるまで待ってると笑ったから。

それが不可能なんて、お互い分かっていたけれど。


「人じゃないのは確かだけど……おにーさん、俺様を探してたの?」


「ああ、随分と長い間な」


無理だと分かっていても願ってしまった。
マーテルの加護を離れた世界。
それでも命は続いているかもしれないと。


「会ってみてどうよ?やっぱり俺様、良い男でしょ?」


自分は何を言っているんだろう。
でも言わなくてはいけない。
この人を離してはいけない。


「ああ、そうだな……」


「じゃあそんな素敵過ぎる俺様に養われるってのはどう?」


次々出る言葉は昔から用意されていたみたいだ。
目を丸くして驚いている男を見て、自然と手が鷲色の髪に触れる。


「多分、ずっと気が遠くなるくらい昔からアンタを待ってた。
そう思いたいだけかもしれないけど」



今までは気持ち悪いとしか思っていなかった雪の中で、ゼロスはただその体を抱き締めていた。



<じゃ、クラトスを頼んだぜ?>


赤髪の変な服装の自分が微笑む。
なんだか懐かしい様な、そんな気もする。






「おっけー。俺様が生きてる内は任されたぜ」







橙の光彩。
雪はもう上がっていた。











end















ゼロスはホストクラブgeniusで働いてる設定(笑)
勿論店長は大きくなったジーニアス、ロイドも在籍!
みんな日本人、ゼロスは黒の長髪さん。本名は多分普通(笑)

普通にホストクラブgeniusの話を書きたいかもしれない…

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