レインユー

□ふたりのはなし
1ページ/1ページ


揺らめく世界に二人きり

















彼女はとても美しかった
血を塗った様な赤い唇
雪の様に白い肌









「石田くん、おはよう」

「おはよう」

それでも密やかに潜む影
花が枯れる一歩手前の美しさ

彼女はそんな人だった



僕は特に何も考える事無く彼女を眺めていた
年相応の笑みなんて見た事が無い
井上さんや黒崎みたいに感情をすぐ面に出す様な人間では無い事だけは確かで




僕とは何の繋がりもない
だから眺めているだけ
彼女と関わりのある人間なんて、このクラスには存在しなかった


彼女はいつも空を見ていて
誰とも関わらないで静かに
ただ独り密やかに空を見ていた






「石田くん」

「…どうかしたのかい?」

「ううん、なんでも」




一度きりの会話

彼女は潤んだ瞳をこちらに向け、何か言いたそうな表情をしたけれどそれが何だったのか結局分からなかった

僕はこれ以上彼女の綺麗な顔を見ていられなくて直ぐに顔を背けてしまった

だから悲しそうに眸を伏せた彼女に気付ける筈が無かった










「…死んだ?彼女が?」

「うん、病気だったんだって
本当は学校になんて来れないくらい酷かったって…」

「そう、だったんだ」






そして今、彼女はもう居ない
身寄りも無かったらしく葬儀は簡素なもので
蘇るのはあの色彩
鈴の音が奏でた言葉






あの後彼女は何を言うつもりだったのだろう
そして僕はそれに対して何と言っただろう
幸せな未来が待っていたのかもしれないのに
奪い取ったのは僕自身だ












ただ一つ確かなのは
この世界に今は独りきりだと、言う事















end


前のサイトから持って来たもの。
雨竜大好き。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ