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強過ぎる光は彼の体を蝕み、自分の死が近いのを嫌でも理解させられた。
悔いも何も無い、安らかな死に様だと思う。
消える命は何処にいくのだろう?天国?下らない、全く非現実的だ。

涙が頬を濡らす。
暖かすぎて悲しくなる、その相手が誰であるのかもヴァンには分かっていた。

唯一の主、唯一愛した人。
こんなに苦しい気持ちになるなんて。
差し出すことを止めたあの時、今も心に残っている。
楽しそうに笑う貴方を見て独りで終わることを決めた。



「ガイラルディア様、泣くなんて何時振りですか?
もう子どもでは無いのですよ」

透明な雫、もう見えない主の表情はきっとずっと昔の幼い顔をしているのだろう。
守りたいと誓ったあの日の泣き顔。白い花を差し出してただ柔らかな髪を撫でた。
もう体は動かない、何も出来ないけれどどうか届いて欲しい。


「ごめん、ごめんなさいヴァンデスデルカ、ずっと守ってくれていたのに、こんな形で、何も出来なくて……」

震える声は子どもの様に言の葉を紡ぐ。
蘇る光景はただ微笑む可愛らしい少年の姿。
与えられた悲しみを取り払ってやりたかった、だからこれで良かったのだ。

幸せな未来、幸せな最期。貴方に約束された世界。
その為の礎になれたから私も幸せだった。


「ガイラルディア様、どうか笑って下さい、昔の様に」

視界はもう見えないけれど、それでも笑って見送って欲しいから。








叶うなら、またこの世界に生まれたい。
また、貴方の傍で。
たとえそれが一瞬の花であっても構わないから。

















end







ヴァン好きだなー

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