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**雨竜夢**
その瞳は夕暮れみたいだ。
あとは暗くなるだけ。
落ちてしまったわけじゃない。
ただ知ってしまったんだろう、叶わぬ願いもあることを。
「また泣いているの?」
「泣いてるんじゃないわよ、心の汗が……」
「もっと上手い言い訳あると思うんだけどなぁ」
「うるさい悪趣味雨竜がっ!
人が失恋してヘコんでる時にちょっかいかけんな!」
「ここ僕の家だよ!」
彼女が好きな人。
橙色の髪をした死神。
彼女がふられた人。
正義感の強いただのクラスメイト。
冗談にしては、失ったものが大きすぎた。
彼女の性格上、友達には戻れない。
もう他人になるしかないんだ。
黒崎一護と言う存在にとって彼女は何の意味も持たない。
「もう嫌になるね」
僕はこんなに君の傍に居るのに。
どんなものからも守ってあげられると思ったのに。
その真っ赤な手首に報いてやることも出来ないんだから。
せめて最期にキスくらいしてくれても良かったんじゃないの?
僕の気持ち知ってたくせに。
「悪趣味はどっちだよ……」
追い掛けて、良いの?
end