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□睡眠花
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眠る眠る眠る。
廻る廻る廻る。

拙い感情表現。黒曜石の棺に横たわる白磁の肌。
揺れる。揺れて、消えて、無くなる。
必要とされず、忘れ去られて、手を差し伸べられることも無い。


それでも自分は自分に必要で、愛せるのは自分だけで。

閉じられた双眼はきっと美しい空色なのだろう。
終焉で、抱き締められた気がした。
私の命を醜い祈りに変えられたなら、貴方の世界を少しでも美しくすることが出来だのだろうか。









「俺は死んだと思ったんだけどな」

最後に見たのは自分の血だった。
痛みよりも何よりもただ赤い液体が宙を舞う。
考えることなど一つもなかった、ただ安らぎが欲しかった。

瞳を閉じて来世は幸せになれるだろうかと、ただそれだけを願うばかりで。


「残念でしたね、貴方のことが大好きな忠犬が助けてしまいましたよ」

ガイ程の能力を持つ人間が倒せない敵では無かった。
あの時、少し反転し喉に剣を突き刺すことなど簡単なことであった筈なのに。
ぼんやりと見つめていた彼の瞳は澄み渡り、動きはしなかった。


「いやいや、本当は俺が忠犬じゃないといけないんだけどな……」

間一髪でルークが間に入って、眠るガイを此処に連れて来たのは前日のことだった。

生きようとする気力が感じられない体はただ今を拒絶している。
生きていたくないのか?と聞けずにその顔を見つめた。

聞けない理由は一つ。
答えは、分かって、いるから。


「気分はどうですか?痛むところは?」

頬を撫でて覗き込む。
生気のない唇も青い肌も全てが美しい。
このまま奪ってしまえたら、私達は幸せになれる?

もう戦わなくて良い、もう苦しまなくて良い。
死にたいなら死んでも良い。共に居れるなら何処でも構わない。
その言葉を言えたらどれだけ幸せなのだろうか。

言える筈はないと二人は分かっていたのに。
だから微笑み、首を振る。


「何処も。ルークに感謝しにいかないとな」


もう届かない世界の片隅と。
美しい未来の深淵に。
立ち上がり扉を開ける彼の後ろ姿はただ冷たい人形の様で。


触れられたなら良かったのに。
その傷ごと愛してあげられたら、幸せになれたのだろうか。






「ありがとう、ジェイド」









その微笑みすらもう、消え入りそうな、







終わりの、



こえ。



















end


ジェイド難しい…

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