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□そして彼は扉を開けた。
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さようならはずっと先だと思ってた。
永遠に近い命を持つアンタだったし、俺だって長生きするつもりだった。
「そりゃないでしょーよ」
白磁の大理石。
白百合が敷き詰められた棺。
眠るのは彼の愛すその人。
ずっとずっとの幸せは無理だ。
ずっとずっと傍に居るのは不可能だ。
祈ってしまったのは俺が弱かったから。
出来損ないの俺は心が狭くてほんの少しの綻びも許せなくて。
「俺の知らない間に行っちまうなんて」
アンタを愛してるから死ぬ時も分かると思ってた、なんて言ったら笑うかな?
それだけ繋がっていると慢心してた。
俺とクラトスは永遠……なんて。
馬鹿げた、思い、を。
他の命なんて意味がない。
他の幸せも必要無い。
<クラトス・アウリオン>は<ゼロス・ワイルダー>の居ない場所で死んだ。
もう会えないし触れられない。
霊魂なんて有り得ないし、どんな死に方をしたかなんて聞きたくもなかった。
抜け殻を見つめてみたけれど、悲しくなっただけ。
クラトスのかたちをした、人形。
呼吸もしない微笑みもしない、ただ其処に居るだけの。
まるで、死んでるみたい、違う、死んでるんだ。
受け止めなきゃ、いけない。
今まで何人も殺して来た。
一緒じゃねぇか、たかが一人の命だ。
大切だっただけで、それは殺して来た誰かも一緒のはずで。
「アンタも……それこそ何千人って殺してたんだろうし」
自業自得、ただそれだけなのかもしれない。
どんな理由をつけてみたところで犯した罪は消えず、変わらない。
「まぁ待っててよ、クラトス」
俺もそのうち死ぬんだろう。
惨たらしい、虫みたいに。
ただの一度も視界に入らず消えるだけ。
因果応報。
当然の結末。
幸せになりたいなんて言えるほど、俺は馬鹿じゃない。
「もしかしたら泣いちゃってるかもな〜」
絶対にクラトスは顔向け出来ないとか何とか言って、アンナさんにも会いに行かない。
無論、ミトスにだって。
愚かと呼べる程に真っ直ぐで真面目で弱い人。
そんなアンタが大好きだった。
迎えに行く。
どんなに離れて、世界が異なったとしても。
「さて、仕方ないから精一杯生きますかね」
もう来ることも無い空間に背を向けた。
自分にはまだ受ける罰がある。
外から聞こえる複数の足音と殺気にゼロスは笑みを作った。
end
書いてて悲しくなってきた(笑)
ちょー難産!書き終わるのに2週間くらいかかった(´・ω・`)