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□リーべ
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人間には沢山のものが必要らしい。
例えば希望とか愛とかそんな反吐が出るものとか。

その言葉を聞くだけで目眩がする人間も居るなんて、誰も知らないんだろう。
詩人が謳う数々の恋の唄は所詮夢で、幻で、嘘であるのに。


恋は叶わないもの。
愛は砕き嘆くもの。
希望は消えるもの。

願ってはいけない未来も間違いなく存在する。
例えば、全ての責任をかなぐり捨ててしまうとか。
例えば、欲望の為に歪める正義とか。





「陛下、何を読まれているのですか?」

ガイは不思議そうにピオニーの持つ本に目をやる。
綺麗に装飾されたそれは旅をしてきた中でも見たことのない美しさだった。

妖しい雰囲気。それでも目を背けられない、危険で甘美な。


「ああ、これは最近献上された本でな……相当古いのかさっぱり読めん。だが美しいから手元に置いておこうと思ってな」

中々様になるだろ?とピオニーはガイを見る。

相変わらず綺麗な顔。純粋な空色。
一番手元に置いておきたいのは間違いなくこの青年。

けれど俺が望むのはガイの幸せだから、何も言わない。
言える筈が、無いのだ。
好きだとか愛してるだとかそんな無力な言葉を。

「はぁ……陛下らしいですね。
古文ならジェイドの旦那が読めるかもしれませんよ?」

「もちろん聞いたが、あのジェイドも分からんそうだ。
……ジェイドには言うなよ、アイツ気にしている様だからな」

「そうなんですか?旦那が分からないんじゃ永遠に謎のままかもしれませんね」

「それも良いさ……いや、その方が良い」

呟く彼はただ無意味にページを捲る。
薄く発光する文字は恐らくこの最愛の青年には見えていないだろう。



<レプリカ実験報告書>


誰にも読めない。読ませない。
偶然手に入れたこの本は間違いなくあの時のもの。
遥か昔に書かれたものに見える様に細工した。


「アイツにも解らないことがあるなんてな」


彼には当然見せていない。
これから先、見せるつもりも無かった。


「そうですね……今頃ルークに八つ当たりでもしてるんじゃないですか?」


ガイラルディアは優しいから慰めの言葉をかけるかもしれない。
だから、その前に居なくなって貰った。

いくら争いが終わったからと言っても決して諍いが無くなった訳ではない。
調停には俺よりもお前の方が良い。
そう、笑って。



俺はガイラルディアが一番大切で、幸せになって欲しい。
他の誰かを不幸にしても悪人になっても構わないくらいに。

だから、これから生まれる命の事は知らないでいてくれ。



「ガイラルディア、お前は自由に生きて良いんだぞ。
無理に俺の傍に居なくても」

綺麗な笑みに綺麗な思惑。
美しさからは程遠い未来。


願ってはいけない禁断の行為。
すぐに隣には新しい命が生まれ、俺はそれを狂った様に愛するだろう。


「俺は、独りじゃないからな」















END















陛下…偶然レプリカ実験報告書を見つけ、ガイラルディアレプリカ作成中
ガイ…何にもしらない
ジェイド…左遷、多分薄々気づいてる




暗い(´・ω・`)
陛下は権力もあるしね!

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