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□また彼は泣いた。
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酷く明るい夜だった。
満月と咲き乱れる花が原因だったようで、シンクはつまらなそうに歩く。
その隣には同じような顔をしたガイの姿。


見透かされているみたいで気味が悪い。
夜は暗いから夜なのに、と金髪を遊ばせてガイは呟いた。
此処に花を植えたのはアンタじゃないか、とシンクは余計に不機嫌になる。

透ける程に白くなった肌。
女の様に伸びた金糸。
細くなった線は幾多の戦いを生き延びた人間には到底見えなかった。

毎日彼は此処を歩く。
静かに、何かを思い出し縋るように。
隣の仮面を取った幼い少年はもう何も言わず黙々と歩いている。


与えられた領地の小さな空間。
彼の祈りと懺悔だけで成り立つ秘密の場所。

死者ですらこの地には存在出来る。
夢かもしれないし、現実かもしれない。
ガイラルディアになってから背負い続ける感情の果て。


「……俺のせいかな、シンクが此処に居るのは」

「どうだろうね。僕は死んだ後の記憶は無いから」


気がついたら目の前にアンタが居た。
最期に見た時よりもっと弱々しい姿で。
涙でぐしゃぐしゃに歪んだその顔を僕に向けるから、どうしようもなくて抱き締めたんだ。

ずっと何かを守っているんだろう。
ずっと逃げられないんだろう。
僕は仕方ないから此処に居てあげるよ。

そう告げたらガイはもっと泣いてしまった。
僕も悲しくて涙が出た。




「俺はいつまでこのまま生きるのかな」

白く細い腕はもう戦いを拒絶していて、受け入れるべき現実をただ遠ざけている。
それでも生かされた命だから。
捨てるなんて、出来ないんだ。

綺麗事を言う。
死んだ人間の分まで生きるとか幸せになるとか。

剣を握れない俺に価値なんて無いと知っているのに。
目眩がする吐き気がする。
たくさんの人間を殺して生きて結局これだ。
何一つ成せもしない。


「……僕はガイの味方だよ、それこそ死んでもね。
生きてても死んでてもどっちでも良い、ガイが存在するなら」


まだ夜は明けない。
ただ願ったのは、少しでも望む終わりでありますように。


それまでは。
もう消えた命だけれど。
そばに、いさせて。














end















シンクとガイ好き!剣握れないシリーズ(*´ω`*)

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