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□月の出
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何故笑う、こんな悲劇に。















「あんなもの見たら、こんな光景は心に映らないさ」

死体の転がる大地を彼は透き通った瞳で見つめていた。
ひとつの夢が散って、ひとつの命が無くなった。

ただそれだけ。他に感じるものなんて無い。


「たかがひとつの命だろ?それが消えたからって俺の世界には何にも変わりはない」


地に伏す体はもう冷たい。
見知らぬ人間がどうなろうと、彼には興味が無かった。

どんな風に生まれてどんな風に恋をしてどんな幸せになりたかったかなんて、どうでも良かった。


あんな体験をして、あんな辛い思いをして、それでも他人に悲しみを捧げる程、人は強く出来ていない。

大切なものが全部消えた空間で、笑う以外に選択肢があったの?
どうしようもなく強い力はそれこそ彼の願いを聞き届けてくれるはずもないのに。



「……別に同情しろとは言いませんけどね、貴方は私よりも酷い人だ」


笑いを噛み殺す様にジェイドは赤目を細めた。
綺麗な人、荒みきった心。その全てがジェイドを捉えて離さない。

落ちるなら、深淵まで。
地獄すら、貴方が居れば楽園に変わる。

気が付けば、連れていって欲しいと腕を掴んでいた。
彼は何も驚かずただ嘲笑っただけ。






「俺は旦那が思ってる以上に屑だよ。
……だからって悔い改めようとは思わないけどな」

拭う血の匂い。
悦楽に似たその感情はきっと背徳であるから。

愛?希望?救い?
そんなものは俺の世界には存在しない。
だから、要らない。



皆不幸になれば良い。
心からそう願う。




「ガイ……本当に明日、裏切るんですね?」


「当たり前じゃないか」




あんな純粋な人間達を。
こんな醜い思いで、別れを告げて傷付ける。
正義なんてこの世界にはあの日から存在しない。




すべてをうしなって。
それでもしあわせがあるのなら、それは。






「復讐しかないんだから」
















end















ジェイドも一緒に裏切り!それもありだなーと思う

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