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□ひとひら
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「なぁアッシュ、お前はもう消えるんだろ?」

静かな世界。
まるで二人しか居ない様な。
そう願ってしまう様な。

ガイは笑う。
悲しいけれど確信を持って、笑うしかない。

心臓が激しく鳴る。
無意味な生を彩り、責める。


「その体はもうルークのものになる。
その時、お前は帰って来ないんだろう?」

器は一つ。
人格も一つ。
器は、アッシュを選ばなかった。


きっとこれが最期の夜。
明日からはアッシュじゃなくてルークになる。
俺の好きな、人間じゃなくなる。


「ああ、そうだろうな。
それが俺に下された判決って訳だ」


強く抱き締めて、それでも時は零れ落ちる。
もう何も言わない、言えない。
足掻いたってアッシュは消えてしまうんだから。

同じ顔、同じ声で変わらず笑う。
それでもアッシュじゃない。
おはよう。おやすみ。あいしてる。
囁かれる言葉ですらも変わらないんだろう。

あの日アッシュが帰ってきた日から、薄々分かってはいたんだ。
祈りは絶対にアッシュを許さない事。


人々の視線、血の繋がった家族でさえ語るのは一つ。

<何故ルークではなくお前が生きている?>

隠し通せない本心。
この世界にコイツの味方は俺しか居なかった。

世界は、人は、共に戦った仲間は、アッシュを不要だと。
愛されるルークを英雄に選んだ。



「……俺も一緒に行こうか、地獄でも何処へでも」

あたたかな鼓動が聞こえる。
これからも変わらず刻み続ける音色。

コレを止めて、しまえば。
この体はアッシュのモノのまま消えてしまえるのに。

たとえば首を締めてしまえば。
たとえば心臓を抉ってしまえば。
アッシュの死を祈る奴等に復讐出来る。

この体が無ければルークの人格は表れず消滅する。
それはきっと大きな意思に背く行為。


「別に、ルークが悪いんじゃないだろ。
……実際世界を救ったのはアイツなんだ」


頬に触れる。瞳を閉じる。
あたたかい。なんでこんなに涙が出るんだろう。


「それに」


きっと、アッシュも泣いているからだ。
浄土になんて行けないけれど別に良い。


「漸く自分で動ける様になったと思ったらお前が居ないなんて、同情するぜ」


痛み。うっすらと目を開ける。
銀の刃。どす黒い血。喉が圧迫されて声も出ない。
何も一思いにやってくれれば良いのに。
相変わらず嫌な奴だな。


深紅と空色。
交わされた視線だけ。意識が遠退く。

ルークが暴れているんだろう。
悲痛な叫びをあげ続けている。

アッシュは笑う。
渡しはしない、ガイは俺のものだ。


「悪いな……ガイは連れていく、テメェにはやらねぇ」


繋がれた手を更に強く握る。
幸せそうな二人。
たとえ愛された英雄でもほどけなかった絆。


緋色の英雄はやがて目を醒ますだろう。
繋がれた手の意味に泣きながら。















end















別にルーク嫌いなわけじゃないんですが、が!
絶対に皆ルークが帰って来なかったらアッシュにあたると思う…特にティア(笑)
ルークはずっとアッシュの中に居て一通り見てます、なんて不憫…

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