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□溺れた魚
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窒息する。駄目になる。
いつかじゃない、きっと明日にも。
風が強い夜、ガイは海を見ていた。
悲しいのか、悔しいのか、憎いのか、殺したいのか、殺されたいのか。誰を?俺を?
「分からないな」
此処から先に、道は絶対に無い。
それでも離れられないのは、消えられないのはどうして?
この平和を壊してしまいたい。
ホドを滅ぼす選択をした世界の幸福安寧、そんなものは許せない必要無い。
壊れてしまえば良いのに、壊してしまえば良いのに。
きっと自分にはその力が有る。
そのつもりでルークに仕えていたのではなかったか?
少なくともこんな結末を望んでいた訳ではない。
「馬鹿は誰なのか、なんてな」
決まりきった事。
馬鹿なのは愚かなのは自分自身。
視界が滲む、涙なんて久しぶりに流した。
「俺に決まってるよ、ガイは俺に同情してくれただけなのに」
気がつけば後ろから縋る様にルークが抱き締めていた。
何処から聞いていたのか、もしかしたら居るのを分かった上で呟いたのかもしれないとガイは笑う。
可哀想なのは誰?
生きるべきなのは誰?
この世界を救ったのは誰?
「同情でもなんでも俺はガイと離れるなんて嫌だった。
……ごめんな、俺の為に世界を許せるわけないのに」
<最後のお願いだ、ルーク……俺を殺してくれないか?>
ガイは死を願っていた。
ホドを壊した世界を憎むことしか出来ない、そんな自分は生きていてはいけないから。
世界の英雄である俺に殺して欲しいと。
<俺はガイを殺すなんて出来ない。
俺はガイと一緒に生きたい!>
あの時ガイは優しいから、何も言わずに抱き締めてくれた。
それから瞳の色が消えてゆく様を俺は見ない振りをした。
いつか来る日を否定しながら。
「ルークが悪いんじゃない、俺が弱いからだ。
俺がお前だけを愛せれば良かったんだから」
真っ黒な海。
このまま全て放棄して消えてしまえたら良いのに。
でも出来ない、俺は確かにルークの事が大切だから。
おいてなんかいけない。共に逝くなんて許されない。
「スキだよ、ルーク」
嘘じゃない。嘘じゃ、ない。
「俺も好きだよ、ガイの事が一番……だから死ぬ時は連れていってくれ、お願いだから」
そんな事は出来ない、だから俺は生きる。
窒息して終わる日まで。
もう肺に酸素は僅かだろうけど。
涙すら、もう流れなかった。
end
ラル様リクエストのルクガイでした。
なんかどっちも気の毒な感じになりました…。
リクエストありがとうございました!