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□サトリ
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厳かに聳える搭。
天まで届きそうな、静かなる搭。
神託を受けるために消えていった神子達。
様々な犠牲の果て、一つに統合された世界。
平安になった世界。



小さな玉座。
其処に居るのはかつて人間だった天使。
その羽根の色は、蒼。

気だるそうに頬杖をつき瞳を閉じている。
その発達した耳に聞こえるのは沢山の足音、ガチャガチャと耳障りな武器の音。
この未来を選択したのは果たして誰だったのか。


ミトスが絶望した世界。止められなかった自分。それを支えてくれたロイド達。
手を取り合って生きていけると思っていた。
だから自分は宇宙へ旅立ったのだ。
悲しそうに微笑む最愛を残して。


「お久しぶりね、クラトス」

リフィルは以前と変わらない美しさで生きていた。
変わったのはその瞳に憎しみと絶望が色濃くあったこと。
消え入りそうな、終わってしまった何かを忘れまいとしている様な。

彼女の手には枷。
額に刻まれた紋は魔力を封じる為のもの。
拘束され、水も何も与えられず閉鎖された空間に封じられている。


「ハーフエルフは何も接種せずにどれだけ生きられるのか、実験らしいわ」

もう長くはないでしょうけど、と彼女は笑った。
そしてその結果を報告する人間も居ない、クラトスが一瞬で消し炭に変えていたから。


「いつからだ?いつからハーフエルフは……」

「ハーフエルフだから、では無いわ。
世界を滅ぼそうとした魔王の仲間だから、よ」


いつしか歴史は改悪され、英雄だったロイドは魔王になった。
たかが少し強いだけの少年に世界を救われたのでは神など不要になってしまう。
だから王や教会は言った。

ロイド・アーヴィングを極刑に処す。
罪状などありはしなかった。
神に仇なしたとされる魔王はただ静かに悲しそうに微笑んだだけ。

もう良い、俺は、疲れたよ。
殺したいなら殺せば良い、アンタ達が正義だと思うのなら今はそれで良いさ。

……俺は馬鹿だった。無理矢理にでもクラトスについていけば何か変わったのかな。





大きな音と赤い血。
少し強いだけの少年の首は簡単に体と離れてしまった。





「ロイドは最後に貴方に謝っていたわ。
いえ、ロイドだけではなかった。
皆、独り残される貴方を心配していたから」


「ごめんな」「すまない」「ごめんなさい」「悪いね」「ごめんね」


「ごめんな、クラトス。
またお前を独りにさせて、絶望させて。
きっとクラトスはこんな世界を赦せないよな。
俺はミトスみたいに英雄にはなれなかった。
俺が死んで皆幸せになるならそれでも良いって思ってしまったんだよ」
















世界は変わってしまった。
赦すも何も無い。
魔王の仲間である自分を、この世界は赦さない、ならば戦う。
どちらかが滅んでしまうまで絶え間なく、終わることなく。


「綺麗なものだ。
出来れば今度はお前と見たいものだがな」


沈む夕日。
もう一度昇るまで自分は生きているのだろうか。
もしも全てを憎み、ミトスの様になれたなら……。


「魔王、か」


その顔はかつて処刑を待っているばかりの最愛に似ていた。


踏み出す足。
握られた剣、煌めく羽根。
瞳にはかつて英雄と呼ばれたミトス同様一筋の狂気。







彼の愛した世界はもう、取り戻せない。
だから、彼が彼で居る必要も無かった。







豪奢な扉が開く。
それはもう二度と人の手で閉じられる事は無かった。














end















魔王クラトスって良いかも(笑)
ロイドは善人だけどミトスみたいにはなれない気がする(´・ω・`)

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