2

□まってた
1ページ/1ページ




「ねぇ、クラトスは春好き?」


春。さくら。散った花、そして新緑。
あの人はこの暖かさを笑った。
好きでも嫌いでもない、けれどひとりでは辛いものだと。













「子供の頃のボクには分からなかったけど、最近ようやく分かる様になったよ」


銀色の髪、あの頃とは比べものにならない程成長した心と体。
長すぎる年月を過ごす為、ゆっくりと形成された青年。
白いスーツは嫌味にすらならず彼の端正な顔を際立たせている。


「久しぶり、クラトス。ボクが誰だか分かる?
ボク、大きくなったでしょう?」


姉さんに会ったら老けたとか言わない方が良いよ、ほんとに怒るから、と彼は笑う。
その屈託のない笑顔は遥か昔の懐かしいハーフエルフのまま。


「こんなに時が流れてもなんでだか皆近くに生まれてくるんだよね。
記憶は無い……と思ってたんだけどそうでもなかったみたいだね?」


ジーニアスは若干パニックになって何も言えなくなっているクラトスから視線をゼロスに向ける。
髪も瞳の色も黒いけれどやっぱりこの人間はゼロスで、喋り方も何もかも昔のまま。
孤独なただの人。
救えるのはやはりクラトスだけ。
だって今、ゼロスは共に戦った時の様に幸せな笑顔を作っているから。


「……まぁとりあえず店長達が長生きなのは分かった。
リフィル様も全っ然年取らないしこの二人の細胞はどうなってんのかと思ってたけど。
俺様生粋の日本人だし、そんなお伽噺信じたくねーんだけど、天使様見ちゃってるしねぇ」


ゼロスは未だ無言のままのクラトスを楽しそうに眺めながら答える。
既視感、懐かしさ、離してはいけないと思ったその手。
最後に見た赤い髪の自分、店長の言葉。
考えられるのは一つしかなかった。


「ほんとゲームみてぇな話だぜ。
ロイド君とか大喜びじゃねぇの?大好きだもんな、こういうお伽噺みたいなの」


「ロイド!?
まさかジーニアス、ロイドも此処に?」


硬直していたクラトスがようやく口を開く。
まさかロイドにまで会えるとは、ああでも今は息子ではないのか……とブツブツと独り言を呟いている。


「なーんだ、やっぱりロイド君もそんな感じ……って、は!?息子!?」


その独り言に驚いたのはゼロスである。
いくら長生きだとは言ってもまさか子持ちだったなんて、しかもよりによって一番仲の良い親友なんて。


「いくらなんでも出来過ぎだろ!この近辺に集まり過ぎじゃねぇ!?
まさか、コレットちゃんとプレセアちゃん姉妹も!?」


「決まってるじゃない。それからご両親のリーガル院長とアリシア夫人、しいなもね」


「……それって俺の知り合いほぼ全員ってことじゃねぇか」


「ね、良い世界でしょう?クラトス」


ジーニアスは再びクラトスに微笑みかける。
彼は絶対にずっと願っていた筈なのだ。
こんな、馬鹿みたいに平和で飽きるほど幸福な世界を。
そこで笑いあえる仲間達の姿を。


「ミトスもね、居るんだ。
ボク達、ほんとの友達になれたんだよ」


「……そうか」


その言葉を聞いた途端、クラトスは花の様な笑みを見せた。
ずっと心残りだった少年。たった一人の英雄。
全てを忘れて幸せになっているのならこれ以上の幸福はない。


「本当に皆、幸せになったのだな」




クラトスの声は今までに聞いたことのない程に優しい。
まるで春の日差しの様だとジーニアスはまた微笑んだ。



























end















やっぱり書いてしまった(笑)
ジーニアスは絶対イケメンになってる、信じてる!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ