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日差しが眩しい。
桜が咲く青空の下、彼等は歩いていた。


「今日も良い天気だな」


「そうだね、これでアッシュが居ないともっと気分良いんだけど?」


「……そのままテメェに返す」


「はは、相変わらずだなぁ」


軽く背筋を伸ばし、また歩き出す。
影は三つ仲良く寄り添ったまま。
手には剣ではなく分厚い本が握られている。
真ん中を歩く青年の瞳は青く、陽光に輝く金髪。
両隣を固める二人も緋色と緑。


「それだけガイが好きってことだよ、まったく罪な男だね」


シンクは幸せそうにガイの頬を撫でる。
それを見たアッシュが不機嫌そうにガイの肩を抱く。
変わらない毎日、平和な世界。


「ヴァンデスデルカも今日来れたら良かったのにな」


「学会だろう?仕方ないな」


「そうそう、パパが働かないとボク達大学にも行けないからね〜」


「……まぁ間違ってはいないけど、また怒られるぞ?」


また四人が巡り合った日。
幼く、孤児院に居たガイたちとは違い、ヴァンはもう大人で三人を引き取るだけの経済力もあった。

あれからもう十数年、四人で家族の様に生きてこれたのは父親の代わりをしてくれた彼のおかげ。
しかしまだ大学生の子供が居るはずのない年齢のヴァンは、パパやお父さんと呼ばれることを極端に嫌っている。
それを分かっていながらシンクはまた人の悪い笑みを作った。


「だってヴァンがパパとか似合いすぎてもうそうとしか呼べないもーん」


「もんとか言うな気持ち悪ぃ」


「まったく喧嘩はやめろよー?」


また言い合いを始めた二人を見ながら、耳を澄ます。
自分を呼ぶ声がする。近づく足音は二人分。


「ほら、久々の再会なんだから」



視界に入ったのはアッシュと同じ髪色の学生。
それから白衣を纏った赤い目の新しい教授。
なんとなく分かっていたんだ、追いかけて来てくれるって。
俺たちより後に死んでるから時間はかかるかもしれないけれど、またもう一度会えるって。
そしてそれが今日なんだと、何故か分かったんだ。


「ガイ!やっと会えた!会えたぁぁぁ!」


「……全然変わってないな、お前」


「お久しぶりです、ガイ。
今日からこの大学でお世話になりますから、末永くよろしくお願いしますね」


「こちらこそ。よろしく、先生?
来世まで追って来るその熱意は認めるよ。ありがとうな二人とも」


「チッ、こっちでもこいつ等と一緒か……」


「あ、珍しくボクもアッシュと同じ事考えてた」


「まぁまぁ、ヴァンデスデルカも喜ぶんじゃないか?」


彼は笑う。彼の名前と同じ花の笑みで。
彼が望んだ幸せを享受出来る理想郷。
たとえそれが現世でなくとも構わない。

彼は笑う。今度こそ幸せになる生を得て。
彼等は笑う。その傍に居られるなら。





誰も知らない悲劇の結末。
世界の神ですら触れられない輪廻の外。










「……もう一度、やり直そう。
今度こそ間違わない様に、幸せになれる様に」


白い手。差し出されたぬくもり。
ああ、やっと追いつけた。


























end










やっと終わった!長くなった…。
ガイ様御一行皆仲良く転生!来世では幸せになれると良いなぁ。
2012.0416 2012.0530加筆

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