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□それが世界の選択である
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晴れ渡る空。
誰も居ない心象。
羨望の瞳。
其処に跪いている人々。
豪奢な城。
謁見の間には様々な種族が居た。
皆頭を垂れて、これから始まる新しい世界に喜びしか感じていない。
「コレット、これで安らかに眠れるか?
死ぬまで世界を案じていたお前の願い、叶えられるよな?」
若くして急逝した神子が望んだのは何時までもこの地を守っていく事。
彼はそれを叶えたかった、彼女を一番に愛せなかった罪滅ぼしでしかないとしても。
自分の一番はクラトス。
それ以外はありえない、そう告げてもコレットはひたすら自分に愛を傾けてくれた。
……だからお前の最期の願いくらい、叶えてやりたいんだよ。
「きっと耐えられる。ずっ世界を守っていける」
この世界には絶対の王が居る。
人間、エルフ、ハーフエルフ、誰もが皆敬愛する唯一の王。
英雄と呼ばれ、十年前世界を統合した少年。
もう青年と呼ばれるまで成長した彼はゆっくりと玉座へ続く扉を開ける。
「唯一王、ロイド様に敬礼!」
鳴り止まない拍手、喜び踊る民衆。
それに笑顔で手を振る唯一王。
これから果てない生を歩み続ける事への恐怖を感じながら。
一歩、また一歩、足は前へ進む。
天使になり世界を統べる王になる、それはまるでかつての英雄ミトスが思い描いていたものの様だと自嘲しながら。
それから幾千年。
彼は今もまだ全てを守り続けている……。
<俺は此処で世界を守るよ。
だからクラトス、いつか帰ってきたら俺の墓参りくらいしてくれよな!〉
それが、彼の選択だった。
だから、何も言わなかった。
か細い声で何かを訴えようとするその顔は、今までで一番悲しかった。
虚しい瞳、色褪せる傀儡の歌は誰を救うのだろう。
あれからもう何千年経ったのだろう?
漸く帰ってきたクラトスを出迎えてくれたのは、青年になったジーニアスだった。
クラトスの両手にあるたくさんの花を見て苦笑いしながら告げる。
「ねぇ、クラトス……まだお墓参りは早いよ。
ロイドはまだ、生きてる。
まだ戦ってる、勝ち負けのない、終わらない戦いを」
驚愕のあまり手放してしまった花達は空高く舞い、そのまま見えなくなった。
ロイドはあの頃より成長しており、おそらく自分と同じくらいの年齢で成長を止めたのだろう。
やはりアンナに似ている、とクラトスは思った。
玉座に鎮座し微笑む唯一王。
周囲にはたくさんの従者。だれもがクラトスに訝しげな視線を投げかけている。
唯一王に会う為には様々な手順を踏まなければならないのに、この男は名前を告げただけで謁見している。
しかも王の前だと言うのに膝を折る事もしない。
ただじっと王の目を見ている。
「久しぶり、クラトス……いや、父さん」
「……大きくなったな、ロイド」
その台詞に誰もがざわめき始める。
しかしクラトスは少し微笑んだだけだった。
その笑みが本心からでないのをロイドは分かっている。
だからただ次の言葉を紡ぐ事に専念した。
「……積もる話もあるから、俺は少し部屋に戻るよ。
父さんも一緒に連れてくからな」
従者たちは慌てたが、絶対的な強さを持つ王が殺される事など万一にも無いと素直に引き下がった。
「行こう、父さん」
「……ああ」
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長くなったので区切ります。
黒いのも好きだけど馬鹿な(良い意味で)ロイドも好き。
あーでもヤンデレロイドが一番好き(笑)