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□ただいま
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あの日、最後の日。
何も無いような青空の下。

その人は俺と似たような髪の色をして、ただ申し訳なさそうに笑ったんだ。
すまなかった、こんな私と血が繋がっていて、こんな私が父親なんて……。
そう何度も謝るから俺も笑った。


「何も謝る必要なんて、無いさ」


これが上辺だけの言葉ってやつなんだろう。

ああせめて血が繋がっていなければ、俺の父さんじゃなければ、この思いを伝える事くらいは出来ただろうに。


「クラトスは、俺の最高の父親だよ」


伝えるのが精いっぱいだった。
クラトスの一番近くに居るのはもう俺じゃなかったし。
綺麗な赤色が目を惹くテセアラの神子。
俺の最愛の人を射止めた奴。

ゼロスがクラトスを好きなのはすぐに分かった。
そしてクラトスもゼロスを少なからず思っているんだろうとも。

出来るなら邪魔してやりたかった。
けれど、俺には守らなければいけないものがあったし、クラトスはもう此処に残るつもりが無いのも分かっていたから。


「さらばだ、ロイド……ゼロス」


美しい人。これからは思い出にしかならない人。
結局最後まで思いを告げる事は無かった。
ただ空を見上げて、少し泣いて、何事も無かった様に。







「なあゼロス」


「んー?どうしたのロイドくん、そんな真剣な顔しちゃって」


「平気、なのか?もうクラトスとは会えないんだぞ」


「ああ、そんなこと?」



あまりに早すぎた別れに、俺はそう聞いた。
思いが通じ合って、それでもすぐにさようならなんて俺は耐えられない。
けれどゼロスはそれすら受け入れて、クラトスを送り出した。
もう二度と会えないと分かっているのに、ただ何時もの様に飄々とした笑顔で。


「奇跡の一つくらい必ず起こる。
それが何時になるかは分からないけどな。
俺様は素敵な男だからどれだけ長い間でも待ってられるのさ。
たとえこの命が終わっても、記憶が無くても、俺は必ずクラトスを待ってる」


その横顔は何時も通りだったけれど、声は優しくあたたかい。
奇跡、なんてゼロスが一番信じてなさそうだけどその瞳はただ先を見ている。
会えると、確信しているみたいに。



「……じゃ俺も諦めずにクラトスを待ってみるかな。
クラトスが帰って来たら父さんだからって関係ない!って告白してみる」


「え!?は!?ダメでしょ!略奪愛とか英雄にあるまじき行為でしょーよ!」


その文句を聞き流しながらもう一度空を見上げる。
俺も、信じてみるよ、会えるって。
どんな形でも、どんな世界でも。




























「は、はじめまして……?おかえりなさい?ああもうとりあえず久しぶり!
なんで記憶無いゼロスんとこに行くんだよクラトス!」


「まさかロイド君も昔の記憶持ってるとか言っちゃうの!?」


「まぁぶっちゃけゼロスくらいじゃない?
ほんっとに何も覚えてなかったのは。皆微妙に覚えてたりするんだけどねぇ」


「店長、遠回しに俺様の事馬鹿だって言ってる?」


クラトスに抱き着いたままのロイドは小さく笑う。
突然の出来事にかたまって動かないクラトスと、なんだか複雑な表情をしているゼロス。

今ならまだ、間に合うかもしれない。
今度こそ思いを告げられるかもしれない。


「もう、クラトスは俺の父さんじゃない。
だから一人の男としてクラトスと仲良くなれる様に俺頑張るよ」


「……?ああ、こちらこそよろしく頼む」


まったく真意に気づいてない思い人を見て、ロイドは盛大に笑った。





















end




最初の設定だとみんな記憶ないってことにしようと思ったんですがなんか無理っぽい…書けない、難しい!

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