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□すくいきれないもの
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痛くなんて無かった。
苦しくなんて無かった。


何度も繰り返した記憶。
誰も望まない結末。
差し伸べられた手を振り解いた、愚かな自分。

息をする度に噎せ返る血の味。
うっすらと見える目の前の人影に笑ってしまう。

馬鹿だなぁ、こんなになっても見捨てられないなんて。


「逝ってしまうのですか?」


返事はしない。
求められていないと分かっていたから。
ただ笑う。
でも両目から流れる水には気付かないふりをした。


「たとえば、私が全てを裏切り貴方を救いたいと願ったなら」


「たとえば、私が全てを捨てて貴方だけの幸せを願ったら」


頬に触れる手は冷たい。
振り払ったあの時と同じ体温。
深々と降る雪の中、繋がらなかった沢山の糸。
断ち切ったのは間違いなく俺だった。
愛よりも友情よりも、自分の終わりが欲しかった。


「貴方を救う資格を得られるのですか?」


冷たい手が首に落ちる。
苦しくなんて、もう、辛くなんて。
ジェイドの全身から噎せ返る程の血の臭いがする、その事実すら嬉しくも悲しくも無かった。


「……何人、殺したんだ?」


掠れて聞こえているかすら分からない声。
それでもジェイドは小さく笑う、とても幸せそうに、見た事の無いほどあたたかく。


「貴方を拒み、貴方を恨み、貴方を許さず、貴方を愛する全員を」


赤い目が美しい。
視界に映る、綺麗な赤はきっと俺の狂気で、夢で、願いだ。
たとえば、俺が愛とか言うものを信じられたなら。
たとえば、俺が過去と決別する事が出来たなら。


「私はもう決めましたから。
貴方だけを愛し、貴方以外を認めない。
ですが不要なものが少々多すぎたので消しただけです」


消えてしまった命は誰かに望まれず終わる。
赤は一点の曇りも無い。
俺みたいに苦悩する事も無く、狂ってしまった訳でもない。
ジェイドはもう選んだんだ、優しい正しさより、俺と居る不幸を。


「ありがとう、少し、救われた気分だよ」


こんな人生でも、こんな終わりなら悪くないなぁ、なんて。
眠って目覚めたらどんな景色なんだろう。
幸せより、ずっと大切にした思いを伝えられるのか。


降りだしたあの時と同じ雪。
誰も居ない、永久に訪れる事は無い春。
それで良かった。



私の世界は、それだけで。















end

















なんという雰囲気文章…。

ガイ裏切り→ルークたちに倒される→瀕死→ジェイド登場
みたいな感じです。
ジェイドはルークたちと一緒にガイを倒してるけどやっぱりガイが大事だった的な…

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