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□花の幸せ
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知っている。知らなければならない。
絶対は此処だ、永遠は此処だ。
俺はシアワセで俺はコウフクで。
それが真実、真実の筈だ。
「此処が全て。それで良い、それ以外無いあってはいけない」
どろりと空色が歪む。
昔の知り合いが見たら罪悪感で直視出来ないであろう光の無いそれ。
それでも彼はシアワセだった。
彼にはもう名前は無い。
彼にはもう此処しか無い。
それでも彼は美しかったし、それでも、それでも……。
彼はあの時願った筈だ。
この振り切れない憎しみも、悲しみも忘れ壊れ消えてしまいたいと。
<もう疲れたんだ、俺は確かにお前が好きだった筈なのに>
ガイの澄んだ瞳からは透明な雫が零れ続けて。
俺は縋ったんだ。
恥も何も全部捨てて、選んだ。
世界の平和もしなければいけなかった贖罪も放棄して。
<さようなら、俺がもっと強かったら許せたのかもな>
ガイがキセキ的に生き残って、記憶を失っていると分かったあの時。
もう離さない、此処でふたりで生きていくんだと。
誰の同意も要らない、勿論ガイの同意も。
平和?仲間?そんなもの。
ガイが生きていてくれれば必要無い。
「俺はシアワセだよ、此処に居るだけで」
彼は曖昧に笑う。
以前の様な悲壮感は無い、綺麗なだけの彼。
「ルーク」
その続きは聞きたくない。
だから強く抱き締める、此処に居たいから居て欲しいから。
小さな小さな居場所。
仲間だった人間達は、世界は、ヴァンデスデルカ達はどうなったのか。
此処は世界に含まれるのか、夢なのか、キセキなのか。
何年経ったのか、それとも時など存在しないのか。
ああだから老いないのか。
綺麗な赤い長髪、ルークはずっとそのまま。
あの日と同じ俺。
死んだ筈の、消えた筈の俺。
誰かの夢、誰かの願い。
それは俺自身なのか。
確かなのは、此処では俺はもうガイでもガイラルディアでもない。
それでも、シアワセだと言う事。
抱き締め返すルークの体は微かに震えている。
何も心配する事は無いのに、馬鹿だな。
「ルークが幸せなら記憶なんて無かった事に出来る。
ルークが思う様に望む様に幸せになろう、それが此処でなら叶うんだから」
そこに現実なんて存在しなくても、此処には全てがある。
それが至上の幸福。
瞳を閉じて、また歪む色。
記憶は仕舞い続け、お前が望む様に。
此処には全てがある。
俺の記憶もルークの記憶も。
けれど望まない限りそれは存在しない。
此処には全てがある。
全てが、終わる事なく、幸せなまま。
end
まぁ雰囲気ですね!笑
久しぶりすみません…。