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□いまでも
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クラトスがゼロスと出会って一週間。
元々一人暮らしだったゼロスの家には新しい住人が居た。


「……起きろ、もう仕事の時間ではないのか?」


何となく自然に同じベッドで寝る二人。
ゼロスの仕事の関係上二人とも夜型で、外はもう夕方になっていた。


クラトスの声にゼロスは薄く瞳をあける。


「おはよークラトス」


そうは言うものの一向に起きようとはしないゼロスにクラトスは無意識に微笑む。

昔、旅をしていた頃もこうやって起こしていた。
はるか昔、もう誰の記憶にも残っていない世界の話。
それでも繋がった世界の話。


「今日は何時もより機嫌良いんでない?」


いつの間にか身支度を始めたゼロスが笑う。
本当に幸せそうな笑顔で。

この世界の二人は恋仲ではない。
互いに思いあっているのは周りには明らかであったけれど。

ゼロスの敵は多い。と言うかクラトスに恋い焦がれている奴が多すぎるのだ。

ロイドもおそらくジーニアスも、そして間違いなくあの男も。


「……まぁ昔の話を聞くと惚れない方がおかしいけど?
あれだけ可愛がられたらねぇ。」


クラトスと一緒に外に出る。
一人言を続けるゼロスにクラトスは何も言わない。
話しかけても仕方ないとこの一週間で理解していた。


「まぁ俺様の方がイケメンだし何の問題も無いし?
まぁ財力は完敗だけどその辺はこれからどうにかなるよな」


「クラトスと一緒に歩いてるのによくもまぁそんな妄想ばっかりできるね?」


気が付くとクラトスの肩に見慣れた手が置かれている。
長身の美青年、しかも金髪、そして長髪。
遥か昔の最強シスコン、そしてクラトスへの愛はそれ以上。

ぶっちゃけ怖い。


「ミトス、元気そうだな」


「当たり前じゃない、クラトスに会えただけで今日は最高だよ。」


「また大袈裟な……ユアンとマーテルはまだ帰らないのか?」


「暫くは帰らないと思うよ?
何回目か忘れたけど新婚旅行だからね。
……今度泊まりにおいでよ、もちろん一人でね?」


「ああ、もちろん……?」


「近い近い近ぁぁぁあい!顔が近い!
クラトス!ミトスのところに行くときは俺様同伴じゃないと駄目だからな、何があるか分かったもんじゃない!」


「わぁ怖い。
……まぁあんまり隙を見せると、どうなるか分からないけどね?
ゼロス、僕はね昔の君には感謝しているんだ。
あんなに心がボロボロだったクラトスを助けてくれたんだからね」


優しく細められた目が怖い。
なんだか黒いオーラも見える気がする。変な汗も出てきた。


「クラトスに不安な顔ばかりさせるなら、君を此処から消す事だって躊躇わない。
もしクラトスが君を不要だと感じたならすぐにでも殺せる……なんて言うのは冗談だけどさ」


声が怖い。ミトスの顔が直視出来ない。とても冗談には聞こえません!


「僕はクラトスが本当に大好きで、世界より何よりクラトスの幸せを願ってる。
たとえ僕の横じゃ無くても構わないくらいにね」


ゼロスにしか聞こえない声でそう呟くと、ミトスはクラトスに笑顔で手を振り背を向けた。
その先にはジーニアスが経営するお店、つまりゼロスの職場がある。


「まぁとりあえず仕事頑張ってね?
クラトスを養えるくらいには稼いで貰わないとね」


「……ハイ」


周りに敵は多いけど、間違いなく最強はミトスだなとゼロスは項垂れた。
その情けない頭をクラトスは撫でて慰めてみる。
これはこれで良いかもしれないとゼロスは少し笑った。











end












ミトスはクラトス溺愛!

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