セイギの声が消えるころ

□リフレイン
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ふたりで一緒に暮らしはじめてどのくらいの時間が過ぎたのだろう。

「ただいま、天使サマ」

その声にクラトスは読んでいた本を静かに閉じた。
ふわりと感じる体温は自分がここに居て良いのだと確信させる。

「おかえり、ゼロス」

抱き締め返す強さにもどこか優しさが垣間見える。

ふたりは漸く一緒になれた。
もう離れたくはなかった。
ずっとふたりで生きていければそれで良かった。

繋いだ手を離すことは絶対にない。
漸く手に入れた人並みの幸せ。

「あらら……天使サマ、何で泣いてるの?」

気づけば涙が止まらなくなっていた。
幸せ過ぎて、満たされ過ぎて。
本当に本当に罪を忘れてしまうほどに。
それが良いことなのかは分からないけれど。

「……ゼロス、お前が居てくれて良かった」

彼は優しく笑う。
そして今までより強く抱き締めた。

「俺様もだよ、たとえ……これが全部夢だったとしても」

ずっとずっと、愛してる。

















「夢……か」

クラトスはぼんやりと天井を眺める。
ロイドと戦い、オリジンの封印が解かれた。
それでもわたしは生き延びてしまったのか。
最愛の人は裏切り者としてもう消えたのに。

わたしに生きる意味なんてもう有りはしない。
それなのにゼロス、お前はまだあんな夢を見せるのか。

もう居ない彼。
軽い笑顔で散ったテセアラの神子。
わたしが死ねば良かったのだ。
何故、なぜ。













「泣かないでよ、天使サマ」







その声が、あまりにも遠い。














end




まさかの夢オチ…

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