セイギの声が消えるころ

□さよならナイト
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侵蝕。どろどろとした感情。
これは敵意だ。
突き刺す様な痛みも吐き出す血液も何もかもが無意味。


「昔読んでやった本に書いてあったろ」


間違ったのは知っていた。
その分岐点が何処だったのかも。
戦争に美しさなんて、善悪なんて存在しない。
殺して殺されて憎んで恨んで……ただそれの繰り返し。

けれどガイは違う。
ガイが与えられたのは、見たのは戦争なんかじゃない。
ただの虐殺、生きてきた全てを破壊される行為。
許されるはずのない、その行い。





「魔王は勇者に殺されて、世界は平和になりました。
めでたし、めでたし……ってな」


ひゅん、と一閃。
ぱらぱらと髪の毛が零れ落ちる。
真っ赤な髪。綺麗すぎて吐き気がした。


「ルーク、お前はあの物語の勇者か?それとも魔王か?」


壁に宝剣が突き刺さる。
……コイツは俺に、殺すか殺されるかを選べと言ってる。
曖昧な言葉は有り得なかった。


「俺は、勇者だよ……決まってるじゃないか、ガイ」


今までこんな笑顔になったことはない。
ルークと言う存在、ガイと言う存在、2つが同時に存在出来るほど彼らは優しくなかった。
どちらかが消えなくては、今すぐに。
復讐は何も産まない。
それで良い、幸福を望んでいる訳ではないから。

消せば消えれば全てが終わる。


「そうだな、お前は勇者だよ」


そして俺が魔王だ。
勇者に殺されてハッピーエンド。
くだらないけどこれが一番正しい結末なんだよ。


「なぁルーク、俺を許してくれるか?」

「ガイが俺を許してくれたら許す」

「なるほど、それは無理そうだ」

「だろ?だからこのままで良いんだって」

「本当、ルークには勝てないな」














〈ねぇガイ、勇者は魔王を殺してからどうしたの?〉

〈ん?……平和になった世界も見ずに、何処かに消えたそうだ〉

〈なんで?よく分かんない〉

〈ははは、俺にもよく分からないな。
もしかしたら……魔王のところに遊びに行ったのかも知れないぞ〉











end




よく分からない…ガイ様が魔王だって話?(違うような)

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